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あく

あく(明く・開く・空く)[aku]

◯ふさいでいたものがはなれ、うちがそとに繋がる。

※「あか(赤、明)[aka]」と同語源。[ak]が不変部分。[ak]は、赤、明け、空き、商い、などに共通する。耕すときを経て物が成り,こうして食べ物が手に入り([ak-eru])、仕事が「あける」こと。

※タミル語<akal>に起源。

◆閉じられた状態にあるものが、明るみに出ること。またそのものを明るみに出すこと。人が携わらねばならないあることが終わり,その仕事から放たれること。また,次の新しい状態になること。

▲あく(自動詞)

▼ときがあける。一定の状態の時が終わる。 ▽夜が終わって朝になる。明るくなる。 ◇『日本書紀』−継体七年・歌謡「愛(は)しけくも、いまだ言わずて阿開(アけ)にけり和妹(わぎも)」

▽時が経過して、年月日や季節があらたになる。次の年になる。 ◇『宇津保物語』−俊蔭「あくる年の春より」

▽ある一定の期間が終わりになる。満期になる。 ◇忌(年季)があける。 ◇『蜻蛉物語』−中「ものいみも、けふぞあくらんと思ふ日なれば」

▼へだてや、おおいなどが除かれ、閉じていたものが開く。 ◇『竹取物語』「たてこめたるところの戸、すなはちただあきにあきぬ」 ▽そこを占めていたものがなくなり、間が広がったりして空間ができる。 ◇『更級日記』「穴のあきたる中より」 ▽官職、地位などに欠員ができる。 ◇『源氏物語』行幸「ないしのかみあかば、なにがしこそ望まんと思ふを」

▽ある一定の期間が終わりになる。 ◇『蜻蛉物語』中「ものいみも、けふぞあくらんと思ふ日なれば」

▽使わないでいる。仕事をしないでいられる時間ができる。 ◇「時間があく」 ◇「仕事があける」 ◇「手があいたら手伝うよ」 ◇「あいた道具をかたづける」

▲あける(他動詞)

▼ところをあける。ふさいでいるものをのぞく。

▽ふさいであるものをのぞく。閉じてあるものを開く。 ◇「門(扉・窓・ふた)をあける」 ◇『竹取物語』「たてこめたるところの戸、すなはちただあきにあきぬ」

▽そこを占めているものを取り除く。中に入っているものや人を外に出す。 ◇『源氏物語』−蜻蛉「心なし、道あけ侍りなんよ」 ◇「鍋(皿・盃)をあける」 ◇「部屋をあける」 ◇「一日中家をあける」

▽使わない状態のままにする。 ◇「手をあけて待っている」 ◇「あいた道具をかたづける」 ◇「今日一日あけてある」

▽(入り口が開く意から)人が出入りできるようになる。多く、商店などが営業を始める、また、営業していることにいう。商売、芝居などを始める。 ◇店(小屋)をあける。

※新規に店舖を建て終わり、あるいは準備が整って、実際に営業し始めるのは「始める」である。「あける」はすでにある店が営業時間になって営業を始めることである。「ひらく」は店の建設から準備して営業を始めることである(現在は「はじめる」とほぼ同意)。 ◇このたび書店をはじめました。 ◇この書店は10時に開く。 ◇ここで新たに書店をひらこうと思う。

−【あき(明き、空き)[aki]】「あく[aku]」の名詞化

▼物がつまっていないで、空間のできているところ。すきま。空白。 ◇あきのない紙面。 ◇『菊池君』(石川啄木)「僕は実に大一郎君の死去が伯父の心(むね)にあけた其の欠陥(アキ)を満たすことができない」

▼(中に入っていたものがなくなることから)使っていないこと。また、そのもの。多く容器や家、部屋、席などにいう。「徳利(席)のあき」

▼使う予定のない時間。ひま。 ◇『坊っちゃん』(夏目漱石)「君と僕を同時に追い出しちゃ、生徒の時間に明きが出来て、授業にさし支へるからな」