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とる

とる(取る・執る・採る・捕る・撮る)[toru]

◯ものにむかい、そのものを手にいれ、思いのままにする。

◆「手(た)」の母音交替形「手(と)」の動詞化。ものをしっかり手に握り、身から離れないようにしっかり持つ。そして、それを意のままにする。

※タミル語<toi>由来。

▼手に持つ。つかむ。つかんで使う。 ◇『日本書紀』皇極三年六月・歌謡「我が手を騰羅(トラ)め」 ◇『万葉集』三九六一「楫(かぢ)登流(トル)間なく思ほえし君」 ◇『伊勢物語』六三「道にて馬の口をとりて」 ◇『平家物語』八「女房達、袴のそばをとり」

▽苗を植える。 ◇『古今集』一七二「昨日こそさなへとりしか」

▽手を引く。また、指導する。 ◇『蜻蛉物語』上「手をとりてみちびく」

▼手元に引きよせ、自分のものにする。逃げないようにしっかり押さえる。つかまえる。 ◇「蝉を捕る」 ◇『古事記』下・歌謡「鷦鷯(さざき)登良(トラ)さね」

▼あることをしっかりおこなう。 ◇「事務を執る」 ◇「志を固く執る」

▼自分の物になるように、また、自分の物として持てるようにする。農作物・草木・魚介類などを収穫、採集する。自分の思い通りに支配、領有する。 ◇『日本書紀』応神一三年三月・歌謡「花橘下枝らは人皆等利(トリ)」 ◇『大鏡』五「天下とる相おはします」

▽報酬として得る。 ◇「給料をとる」 ◇『竹取物語』「給はせたる物各分けつつとる」

▽人について言う。(嫁・むこ・養子などを)迎え入れる。 ◇「むこ(嫁)をとる」 ◇「主をとる」 ◇「弟子をとる」 ◇「客をとる」 ◇『宇津保物語』国譲下「ちひさかりけるを、とりて養はせ給ける」 ◇『源氏物語』紅葉賀「舞の師どもなど、世になべてならぬをとりつつ」

▽和歌などの一部を引き受けてよむ。 ◇「本歌を取る」 ◇『源氏物語』早蕨「はかなきことをも本末をとりていひかはし」

▽食べ物、読み物などを注文してとり寄せる。 ◇「蕎麦をとる」 ◇「雑誌をとる」

▽ある成績や資格などを得る。 ◇「学位を取る」

▽費やす。積み重ねる。 ◇「時間をとる」 ◇「手間をとる」 ◇「年とる」 ◇「明かりをとる」

▼それまであった所から引き離す。ついているものを除き去る。 ◇「垢をとる」 ◇『浮・好色貝合』下「先、衣とらっしゃれ」 ◇「命(首)を取る」 ◇『万葉集』九七二「言挙げせず取(とり)て来ぬべき男とそ思ふ」 ◇『大和物語』一二六「物の具もみなとられはてて」 ◇『平中物語』一「つかさとらせ給へば」

▼身に負う。評判、恥辱、失敗などを我身に受ける。 ◇「不覚をとる」 ◇『古今集』六二八「なき名とりては苦しかりけり」 ◇「労をとる」 ◇「責任をとる」 ◇『源氏物語』東屋「大臣にならむ贖労(ぞくらう)をとらむなどぞ」

▼ある形をつくり出す。 ◇「型を取る」 ◇「メモをとる」 ◇「きげんをとる」 ◇『伊勢物語』四三「この女、けしきをとりて」 ◇「寸法をとる」 ◇『蜻蛉物語』上「かずにしとらば尽きぬべし」

▽ことを解釈する。あることをおこなう。 ◇「人の話を悪くとる」 ◇「自由行動をとる」 ◇「攻勢をとる」 ◇『源氏物語』若菜上「身にとりては事にもあるまじく」 ◇『平家物語』四「凡人の家にとらば公文所ていのところ也」