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の〔辞〕

の〔辞〕[no]

◯体言または体言に準ずるものを受け続く体言を限定する。

※タミル語<in>由来か。

▼〔格助〕下の実質名詞を種々の関係において限定・修飾する。

▽場所や時、方位を表す。 ◇『古事記』上・歌謡「山処(やまと)能(ノ)一本薄(ひともとすすき)」 ◇『万葉集』二二「河上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて」 ◇『源氏物語』若紫「近き所には、播磨の明石の浦こそなほことにはべれ」 ◇「京都の南東の宇治」

▽行為者、生産者、所有者を示す。 ◇『万葉集』一四七「天の原振り放(さ)け見れば大君の御寿(みいのち)は長く天足らしたり」 ◇『蜻蛉日記』下「三月一五日に院の小弓はじまりて」 ◇「山田の書いた本だ。」

▽活用語の連体形、または連体格を示す格助詞「が」を受けて形式名詞として用いられ、「もの」「こと」の意を表す。 ◇『源氏物語』常夏「このごろ世にあらむことの、少しめづらしく、ねぶたさ醒めぬべからむ、語りて聞かせ給へ」 ◇『曾丹集』「人妻と我がのと二つ思ふには馴れこし袖はあはれまされり」 ◇「定義集を作るのに忙しい」

▽下の形式名詞の実質・内容を示すもの。 ◇『万葉集』三六六一「風能(ノ)むた寄せ来る波に」 ◇『源氏物語』桐壺「右大弁の子のやうに思はせて」

▼主格を示す助詞。 ▽言い切りにならない句の主語を示す。 ◇『万葉集』一七三「高光る吾が日の皇子乃(ノ)いましせば」 ◇『源氏物語』夕顔「御けしきのいみじきを見たてまつれば」

▽連体形で終わる詠嘆文や疑問・反語・推量文の中の主語を示す。 ◇『万葉集』一七「しばしばも見さけむ山を心なく雲乃(ノ)隠さふべしや」 ◇『枕草子』一「むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる」 ◇「飛行機雲の長いこと」

▼他の格助詞の用法に通ずるといわれるもの。「を」「に」「と」に通う「の」といわれる。 ◇『万葉集』四一九「岩戸割る手力もがも手弱き女にしあればすべ乃(ノ)知らなく」 ◇『土左日記』「きのふの同じところなり」