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ふる(振)

ふる(震る、振る)[huru]←[furu]

◯大地や海は震えることで大きな力、霊力を発現するように、祭具の鈴、袖、領巾(ひれ)等をふることで、そのものの力を発現させることが出来る。

◆ものをゆり動かしていのちを目ざめさせること。物(もの)が命(いのち)の力(ちから)で生き生きと小きざみに動くこと。

▼生き生きと動く。 ◇『日本書紀』推古「地(ない)動(ふり)て舎屋(やかず)悉くに破(こぼ)たれぬ」 ◇『万葉集』二七三六「風をいたみ甚(いた)ふる波の間無くわがおもふ君は相思ふらむか」

▼ものをゆり動かしていのちを目ざめさせること。 ◇『日本書紀』天武十四年「是の日天皇のおほみ為に招魂(みたまふり)しき」 ◇『万葉集』四七八「ますらをの心ふりおこし剣太刀腰にとりはき」

▽遷座する。神霊をうつす。 ◇『大鏡』五「大和国三笠山にふり奉りて、春日明神と名づけ奉りて」

▽みこしを勢いよくかつぎ動かす。神輿・神宝などを荒々しくかつぐ。 ◇『平家』二「今度神輿内裏へ振たてまつる衆徒の張本をめされけり」

▼ものの一端を動かし、動きを他の一端に及ぼす。 ◇『日本書紀』欽明二三年七月・歌謡「領巾(ひれ)甫羅(フラ)す見ゆ」

▽全体を、ゆり動かす。前後または左右に動かす。まき散らす。配り当てる。 ◇「首を縦に振る、手を振る。 ◇『蜻蛉物語』中「あなかまと、ただ手をかき、面をふり」 ◇さいころを振る、塩をふる。 ◇役を振る。 ◇ルビを振る。

▽嫌って相手にしないようにする。すげなくする。特に男女の間で、冷淡にする。失う。捨てる。 ◇振られる。 ◇『枕草子』八六「いかで、さつれなくうちふりてありしならん」 ◇社長の椅子を棒に振る。

−【ふり(振・風)[huri]】「ふる」の不変部分[hur]に[i]がついて、行為の様子を意味する。

▼動きの様子、人のふるまい。挙動。しぐさ。身ぶり。また、様子。姿。風(ふう)。なりふり。それらしくよそおった様子。 ◇人のふり見て我がふり直せ。 ◇『後鳥羽院御口伝』「大僧正は、おほやう西行がふりなり」 ◇知らないふりをする。

−【ふるえる(震える)】「ふる(震る)」の口語。 ◇ガラス窓がふるえる。 ◇『めぐりあひ』<二葉亭四迷訳 >「落ちた木枝にかき乱されて水の波動(フルへ)るやうに」 ◇怒りにふるえる。 ◇『人情本・春色梅児誉美』「ぶるぶると、ふるへる娘の手をとれば」