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むすぶ

むすぶ(結ぶ)[musubu]

◯端と端をからませつなぐこと.

※タミル語<muti>由来。結ぶ。完全になる。なしとげられる。

◆分かれているものをつなぐこと。

※語源的に「むす(生す)」との関連は確定できないが、「むす(生す)」―「ひ(霊)」と意味が関連して、むすぶことで新たな魂を込めるとの意味に深まったと考えられる。

「むす」もまたタミル語<mucu>に由来する言葉であり、意味は「群れをなして集まる」であり、ヒもまたタミル語<pe>に由来をもつ。タミル語のなかでこれらの言葉の関連は確定できないが、日本語として熟成するなかで、端と端をからませつなぐことを原義とし、そこから、分かれているものをつなぐこと、一つにまとめることへと、深まっていったと考えられる。

▼紐のようなものの端と端をからみとめてつなぐ。 ▽紐や糸をつなぐ。かたくゆわえる。 ◇『万葉集』七四二「一重のみ妹がむすばむ帯をすら三重むすぶべくわが身はなりぬ」 ◇『万葉集』四三三四「児らが牟須敝(ムスベ)る紐解くなゆめ」

▽松の枝、草などの端をゆわえ合わす。魂を結び込めて生命の安全、多幸などを祈る。 ◇『万葉集』一四三「磐代のきしの松が枝むすびけむ人は帰りてまた見けむかも」 ◇『万葉集』四五〇一「松のさ枝をわれは牟須婆(ムスバ)な」

▽手紙などをたたんで結び文にする。 ◇『源氏物語』胡蝶「唐のはなだの紙のいとなつかしうしみふかうにほへるを、いとほそく小さくむすびたるあり」

▼手の指をからませたりして形を作る。

▽両手のひらを一つに組み合わせる。特に、その手で水をすくうのをいう。 ◇『万葉集』一一四二「命をし幸くよけむと石走る垂水の水をむすびて飲みつ」

▽仏教や陰陽道で手指でさまざまな形をつくる。「印を結ぶ」の形で用いられる。 ◇『古今著聞集』二・四九「定印を結て、居ながら終にけり」

▽両手で飯をおさえて、握り飯をつくる。 ◇おむすび ◇『雑俳』軽口頓作「むすばるる・下卑で申さばにぎりめし」

▽指を折っててのひらを閉じる。また、そのようにして手と手をつなぐ。 ◇「むすんでひらいて」

▼交わりを緊密にする。堅く結束する。 ▽男女が再び会うまでの契りとして、相手の衣の紐や下紐をしっかりつなぐ。 ◇『万葉集』三七一七「旅にても喪なく早来とわぎもこ(吾妹子)がむすびしひもはなれにけるかも」

▽ものとものの間に関係をつける。 ◇「縁を結ぶ」「契りを結ぶ」

▽同じ志の人が結束する。集結する。 ◇「条約を結ぶ」 ◇「同盟を結ぶ」 ◇『万葉集』三七九七「死にも生きも同じ心と結(むすび)てし友やたがはむ我れもよりなむ」 ◇『平家物語』七「義仲行家以下党を結て数あり」

▽開いている口を合わせる。口などをしっかりと閉じる。 ◇「口を結んで語らない」

▽場所と場所を直接つなぐ。 ◇「東京と京都を結ぶ道路」

▽まとめて形にする。また、完成させたり、約束をつけたりする。

▼ある情況や感情を形づくる。夢として形づくる。 ◇『源氏物語』明石「草の枕は夢もむすばず」

▼花を結実させる。実らせる。 ◇「実を結ぶ」 ◇『大鏡』一「枝もしげりて、このみをもむすべや」

▼庵室などを作る。かまえる。 ◇『今鏡』四「草庵ひとつむすびて取らせられなんや」

▼しめくくりをつけて終わりとする。結末をつける。 ◇「文を結ぶ」 ◇『申楽談儀』序「皆面白しと見て、帯を解ける斗を似せて、むすび納むることを知らず」

▼(文法の係り結びで)上にある係助詞に呼応させた語形で文を終わらせる。

▼まとまって形を成す。固まる。露、霧や氷などが凝固、凝結する。むすぼおる。 ◇「露を結ぶ」 ◇『万葉集』一一一三「この小川霧そ結(むすべ)る」