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も〔辞〕

も[mo]

◯「甲も乙」は、甲が、甲の他のものと同様に、その固有な性質(の一つ)として,乙をもっていることを示す。「他の者と同様に」を強調することもある。

※タミル語<umy>由来。これ一つとは確定できない、の意。

◆「甲も乙」は甲が既知であってしかも他のものと同じく、それが乙という内容をもっていることを示す。 「他にもある」ことを強調する。「甲は乙」は甲が既知であって、それを話者が話しの主題として持ちだし、他とは異なって,それこそが乙という内容をもっていることを示す。他の者と同じであるということは、他と区別できなということであり、不確実であることを示す。不確実であるがゆえに、それは、推量、未定、願望、(特定することの)否定の意味を有する。

▼甲が体言で並列、列挙、不確実、非限定などを叙述する。

▽甲を不確実、非限定、仮定、未定のものとして提示し、何においてそうであるのかを叙述する。 ◇『源氏物語』桐壺「頬つきまみなどは、いとよう似たりしゆゑ、とひて見えたまふも、似げなからずなむ」 ◇『源氏物語』桐壺「人のそしりをもえはばからせ給はず」

▽これもあれもとと不確実なものを列挙、並列する意を表す。 ◇『古事記』上・歌謡「太刀が緒も(母)いまだ解かずて襲(おすひ)をも(母)いまだ解かねば」 ◇『枕草子』一四一「この草子を、人の見るべきものと思はざりしかば、あやしきことも、にくき事も、ただおもふことを書かむと思ひしなり」 ◇『宇治拾遺物語』一〇九「このことを聞たる人々、わらふもあり、にくむも有けるに、『よき日取りて、仏供養し奉らん』とて」

▽一つを挙げて、該当する他の類例を暗示する意を表す。また、他の同種のものを類推させる意を表す。 ◇『万葉集』八「熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮も(毛)かなひぬ今は漕ぎ出でな」 ◇『古今集』二四「ときはなる松のみどりも春くれば今ひとしほの色まさりけり」

▽一つの事柄の上に、同種の事柄をもう一つ加えるという添加の意を表す。 ◇『源氏物語』末摘花「絵など描きて、色どりたまふ。よろづにをかしうすさび散らしたまひけり。我も描き添へたまふ」 ◇『宇治拾遺物語』一四「源大納言定房といひける人のもとに、小藤太と云侍ありけり。やがて女にあひ具してぞありける。むすめも女にて仕れけり」

▽少なくとも,という願望を表す。 ◇『万葉集』一〇七七「ぬばたまの夜渡る月をとどめむに西の山辺に関も(毛)あらぬかも」 ◇『徒然草』一三七「椎柴・白樫などの濡れたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しう覚ゆれ」

▼感動、詠嘆を表す。

▽副詞または形容詞の連用形に付き、感動・詠嘆の意を表す。 ◇『万葉集』二四八「隼の薩摩の迫門(せと)を雲居なす遠くも(毛)われは今日見つるかも」 ◇『源氏物語』帚木「女の、これはしもと難つくまじきはかたくもあるかなと、やうやうなむ見たまへ知る」

▽主題を詠嘆的に提示する。 ◇『源氏物語』桐壺「草むらの虫の声々もよほし顔なるも、いとたち離れにくき草のもとなり」

願望の対象を感動的に提示する。 ◇『万葉集』八〇六「竜の馬母(モ)今も得てしか」◇『徒然草』一三七「心あらむ友もがな」 ◇「その夜もふけた頃」

▽間投助詞に上接して軽い詠嘆を表す。 ◇『万葉集』一「籠も(毛)よ み籠持ち ふくしも(毛)よ みぶくし持ち」

▽形容詞の連用形・副詞・数詞・接続助詞「て」などを受け、また複合動詞の中間に介入して詠嘆的強調を表す。 ◇『古事記』下・歌謡「梯立の倉梯山は嶮しけど妹と登れば嶮しくも(母)あらず」 ◇『源氏物語』乙女「いとおよずけてもうらみ侍るななりな」 ◇「引きもきらぬ参拝者」 ◇「十年も前のこと」

▽文末用法。文末の終止形(文中に係助詞があるときはそれに応ずる活用形)およびク語法を受けて詠嘆を表す。 ◇『古事記』中・歌謡「はしけやし 我家(わぎへ)の方よ 雲居立ち来も(母)」

▼活用語の連体形を受け、また「ても」の形で確定の逆態接続を表現する。 ◇『源氏物語』橋姫「心ひとつにいとど物思はしさ添ひて内裏へ参らむと思しつるも出で立たれず」