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もと

もと(本、元、基、下、許、素)[moto]

◯もののあるところ。

◆草や木の、大地に接してそれを支えるところ。ここから、ものがある根拠を意味する。人の根拠地、本拠、居所。ことの根拠、根本、原因。いまあるものの本来の在り方。 さらに時間へと用法が拡大し、本来、以前、昔の意味に広がった。「すえ(末)」、「さき(先)」の対義語。

※タミル語<mut al>由来。

▼支えるところ。 ▽草木の根。株。ねもと。立っているものの下部。 ◇『日本書紀』大化五年三月・歌謡「模騰(モト)毎(ごと)に花は咲けども」 ◇『万葉集』四〇〇六「かき数ふ 二上山に神さびて 立てる栂の木 幹(もと)も枝も 同じ常磐(ときわ)に」 ◇『竹取物語』「もと光る竹なん一すぢありける」 ◇『伊勢物語』八二「その院の桜ことにおもしろし。その木のもとにおりゐて」 ▽垣根や階段、柱、几帳などが地面や床に接するところ。 ◇『万葉集』二三一六「奈良山の峰なほ霧(きら)ふうべしこそ籬(まがき)の下の雪は消(け)ずけれ ▽山のふもとや岩の下。 ◇『古事記』下・歌謡「葉広(はびろ)熊白檮(くまかし)母登(モト)にはい組竹生ひ」 ▽人の居所 ◇『竹取物語』「わうけいとふ人のもとに文を書きて」 ▽すぐそば。物の下。また、そのものの近く。 ◇「白日のもとにさらす」 ◇『万葉集』三八一七「かるうすは田廬(たぶせ)の毛等(モト)に わが背子はにふぶに咲(え)みて立ちてます見ゆ」

▽語素として ◇「国もと」「そこもと」「足もと」「手もと」「ねもと」「ひざもと」「枕もと」

▼ものの根拠。 ▽根元。根本。素地。みなもと。 ◇「口は禍いの元」 ◇「元をただせば」 ◇「…を元に推論する」 ◇『源氏物語』帚木「もとのしなたかく生まれながら」 ▽本来あるもの。 ◇『竹取物語』「かぐや姫もとのかたちに成りぬ」 ▽ここに至る以前。 ◇『古今集』七四七「月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして」 ▽原因。たね。 ◇「風邪がもとで寝込む」 ◇『夜の寝覚』二「こがす歎きのもととなりにけるも、かなしく思しつづくるに」 ▽利を生むもの。資本。資金。もとで。元金。原価。 ◇「もとをとる」 ◇「もとも子もない」 ◇『日本霊異記』下・四「銭一倍にして、僅に本(もと)の銭を償ひ、未だ利の銭を償はず」