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あらた

あらた(新た、革)[arata]

◯[ar]は「生る[aru]」「現われ[araware]」の[ar]などと同じ。何もなかったところに、現れることをいう。[ta]は「た(田)[ta]」である。「開墾され出現した田」が原義。

※[ar]はタミル語<alar>起源。「た(田)[ta]」はタミル語<tampal>起源。これが混成語として熟し、[ta]は人の手が入り耕された何かの状態を表す言葉となり、「あらた」が「それまでなかったものが現れ出ること」を意味するようになった。

◆混乱し混沌としたところが、はじめて人の働く場になること。それまでなかったものが現れ、その状態になること。

▼ものが今までと違って新しい。 ◇『万葉集』一八八四「冬過ぎて春の来たれば年月は新たなれども人は古りゆく」 ◇『万葉集』四二九九「年月は安良多安良多爾(アラタアラタニ)相見れど」 ◇『奥の細道』「金(こがね)の柱霜雪に朽ちて、既(すでに)退廃虚空の叢(くさむら)と成るべきを、四面新に囲て、甍(いらか)を覆いて風雨を凌ぐ」 ◇『航魯紀行』森有礼「暫時の慰みを取りておのが身をよく新たにし、后の日のもの学びにこころをそそぐぞこの国のならひなり」

▼何かのことを改めて行なうさま。 ◇『謡曲・金札』「四海を治めし、おん姿、あらたに見よや」

▼心に残るほど新しいこと。見た目にはっきりとわかるさま。鮮やか。

◇『大鏡』「すべらぎの跡もつぎつぎ隠れなくあらたに見ゆる鏡かも」 ◇『類従本千里集』「雲もなく谷は山さへはれ行けば水の色こそあらた成けれ」

▽効果、結果などが著しいさま。特に神仏の霊験についていう。あらたか。 ◇『今昔物語』「昔は此様(かくよう)に下揩フ医師共の中にも、新たに此(かく)病を治し癒す者共なむ有りける」 ◇『源氏物語』玉鬘「初瀬なむ、日の本のうちにはあらたなるしるしあらはし給ふ」 ◇『奥の細道』「かかる道の果て塵土の境まで、神霊あらたにましますこそ、吾国風俗なれ」