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る〔辞〕

る[ru]

◯「ある」(有る、在る、生る)[aru]と基本的に同じ意味を加える。動詞の未然形で[a]で終わるものにつくと[a−aru]となる。ここで母音が続くことを裂け、[ru]のみが残ることで、〔辞〕としての「る[ru]」が用いられるようになった。また他の母音で終わるものにつくとやはり母音が続くこととなり、「r]をはさんで「raru]〔辞〕としての「らる[raru]」が用いられるようになった。

◆人の手を離れたところで、動詞の動作・作用・状態が「なる」こと。ちなみに人の手によって「なる」ようにしむけることを「する」という。「る」と「す」、「らる」と「さす」は対照して用いられる。 同様にして動詞の動作・作用・状態が「なる」ことから、「できる」という可能の意味に展開する。また、同様にして自身のうえに何ごとかが起こることから受け身の意味となる。さらにまた、同様にして何ごとかがなされるところから、それをなす人への尊敬の意も生まれた。

▼自発を表す。人の手を離れたところで意図することなく、動詞の動作・作用・状態が起こること。 ◇「放って置いたのが悔やまれる」 ◇『万葉集』三三七二「相模路の陶綾(よろき)の浜の真砂(まなご)なす児らは愛(かな)しく思はるる(流留)かも」 ◇『源氏物語』夢浮橋「親のおはすらむやうはほのかにもえ聞かずかしと、なかなかこれ(浮舟の弟のこと)をみるにいと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ」 ◇『平家物語』灌頂・大原御幸「遠山にかかる白雲は、散りにし花のかたみなり。青葉に見ゆる梢には、春の名残ぞおしまるる」

▼可能を表す。することができる。古代は、否定の表現を伴って不可能の意を表すのに用いられるのが普通であったが、中世末以降、打消を伴わないで可能の意を表すようになる。 ◇「行こうと思えばいつでも行ける」 ◇『万葉集』四三二二「影(かご)さへ見えて世に忘られ(礼)ず」 ◇『枕草子』一八八「病は。胸。もののけ。あしのけ。はては、ただそこはかとなくて物食われぬ心地」 ◇『源氏物語』玉鬘「歩むともなく、とかくつくろひたれど、足の裏動かれずわびしければ、せん方なくて休みたまふ」

▼受身を表す。他から何らかのことをされる。それとともに迷惑や恩恵をこうむっている気持を、あわせて表現することが多い。 ◇「車にひかれる」 ◇「親に死なれる」 ◇『万葉集』八九四「唐(もろこし)の遠き境につかはされ(礼)」 ◇『枕草子』九九「元輔が後といはるる君しもや今宵の歌にはづれてをる」

▼尊敬を表わす。他人の動作を表す語に付いて、敬意を示す。 ◇「いつ行かれますか」 ◇『源氏物語』東屋「右近が言ひつる気色も、いとおしなべての今参りにはあらざめり、と心得がたく思ぼされて、と言ひかく言ひ恨みたまふ」