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あらたまる

あらたまる[aratamaru]

◯かな表記した「あらたまる」は現代では一つの言葉であるが、由来は二系統ある。

一つは「あらた(新た)」から派生したもの。「まる」は云々の状態になることを意味するので、荒れ地が開墾され田の状態になることが原義。そこから、ものが新しくなることを意味する。

一つは、[ara]-[tama]-[ru]である。つまり、「新魂る」であり、新たに魂がこめられる、の意味である。冬の籠もりのときに新たな魂がこもり春に芽を吹く。新しい春、新たな春になる。

この二つの異なる言葉が、田を耕し稲を育てる営みのなかで互いの意味を混成し、新しい生命、生命力がこもって、刷新されることを意味する言葉として育った。

◆ものに命がこもり生まれ変わる。ものがちからを得て、何かのことが新たにおこなわれる。

▼物事が新しくなる。古いものが新しいものに替わる。入れ替わる。変化する。

◇『万葉集』一八八五「物は皆あらたまる吉しただしくも人は古りゆくよろしかるべし」」 ◇『古今集』二八「ももちどりさへづる春は物ごとにあらたまれども我ぞふりゆく」 ◇『源氏物語』浮舟「年あらたまりてなにごとかさふらう」 ◇『方丈記』「人の心みなあらたまりて、ただ馬、鞍をのみ重くす」 ◇『徒然草』「花やかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変わらぬ住家は人あらたまりぬ」

▽物事が改善される。前よりもずっとよくなる。面目が一新される。 ◇『枕草子』四九「職の御曹司の西面の『あらたまらざるものは心なり』とのたまへば」

▽ことさらに態度を整えてきちんとする。堅苦しい他人行儀の態度やことばつきになる。◇『浮雲』「改まって外出をする時を除くの外は」 ◇『吾輩は猫である』「『少々先生に御願があって参ったので』と改まる」

▼「年」や「月」また「春」等にかかる。これは「新魂」由来であろう。

◇『記歌謡二八』「あらたまの年が来(き)経(ふ)れば あらたまの月は来経ゆく」 ◇『万葉集』三六九一「波の上ゆ なずさひ来にて あらたまの 月日も来経ぬ」