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うら

うら(裏、浦、心、占)[ura]

◯うち(内)のところ。

「う[u]」は「うむ(生む)」の[u]、「うみ(海)」の[u]と同じく、大地の恵みとして得られ、保存しておく余剰の食物を意味する。ちなみに「うむ(生む)は[u]をもたらすこと。「うみ(海)」は[u]-[na]から転じた。[na]は大地。[u]を生む大地、の意。[ura]の[ra]は「くら(蔵)」の[ra]、「てら(寺)」の[ra]と同じく、「あらしめる場」ほどの意味。働いて得た大地の恵みとしての糧を蓄えておくところ。

※タミル語<ul>起源。

◆生産の場としての表で得られた剰余を裏に蓄える。大地の恵み、剰余農産物は、人の目からは見えないところに蓄えられた。このとき漢字「裏」をあてる。海の恵み、海産物は、海、湖などの湾曲して、陸地に入り込んだところに蓄えられた。ここから「浦」となる。おおやけの人格(体面)に対する内面のこころ。このとき「心」をあてる。また目に見えない神の意を一定の方式で見えるようにすることを「占う」という。

▼入り江。湾。海岸。海辺。浜辺。 ◇『万葉集』四〇八三「玉くしげいつしか明けむ布勢の海の宇良(うら)を行きつつ玉藻拾(ひり)はむ」 ◇『新古今和歌集』三六三「み渡せば花ももみぢもなかりけり浦の苫屋の秋の夕ぐれ」

▼ある限られた範囲のうち。内部。うち。なか。 ◇『万葉集』三七五〇「天地のそこひの宇良(ウラ)に吾(あ)が如く君に恋ふらむ人は実(さね)あらじ」

▼ものの人の目にふれない部分。ものの内側や内面の部分。 ◇「葉(紙)の裏」「足の裏」 ◇「裏手」「裏通り」「裏地」 ◇「裏からも見てみる」 ◇『野分』夏目漱石「運命は大島の表と秩父の裏とを縫い合わせる」

▼あることの人の目にふれない部分。あることの内側や内面の部分。 表だたないで、隠れているところ。 ◇「裏で操る」 ◇「事件の裏に女あり」 ◇「この決定には裏がある」

▽表面に現われた物事に対して、相反するような物事。 ◇「うらはら」「うらうえ」 ◇「うらをいう」 ◇「うらをかく」うらへ回る」

▽命題の仮定と結論とをともに否定して得られる命題。 命題「PであるならばQである」に対して、命題「PでなければQでない」をもとの命題の裏命題という。

▼表−裏の対に対して、面−心(うら)の対であったと考えられる。同時に朝廷に献上された女が故郷の浦を懐かしみ思い出す心情の加わった。「裏」の意をくんで、中世以降「意識して隠すつもりはなくても、自ずと隠され表に出てこない奥底の心情」を意味するようになった。 ◇「うらがなし」 ◇「うらさびし」