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おもかげ

おもかげ(面影、俤)[omokage]

◯「おも[omo]」については、「おもて」参照。話者が思いをかける場、ものや人を意味する。「かげ[kage]」については「かげ」参照。光によって現れる像。思いをよせることで心にうかぶかたち。

◆いま現実にあるわけではないが、思いの深さのゆえに、ありありと心に浮かんでくるもののかたちやすがた。人のことにも、ものや情景についても言う。

▼心にうかぶ、人の顔やその姿、もののありさま。目の前に実体のないものをさすことが多い。 ▽目の前にないものが、あるように心に浮かぶこと。その姿。記憶に残っている姿。 ◇『万葉集』四二二〇「延(は)ふ蔦の 別れにしより 沖つ波 撓(とを)む眉引(まよびき) 大船の ゆくらゆくらに 不屈於毛可宜(オモカゲ)にもとな見えつつ」 ◇『源氏物語』若菜上「見しおもかげも、わすれがたくのみなむ、思ひ出でられける」 ▽あるものに似た姿。それらしい顔つき、様子。 ◇「どことなく父親のおもかげがある」

▼現にあるかのように思い浮かぶものの様子や情景。 ◇『万葉集』三九六「陸奥(みちのく)の真野の草原(かやはら)遠けども面影にして見ゆといふものを」 ◇『実隆公記』文明七年正月朔日「乱後今年始而有二公事一。再興之面影珍重珍重」

▼目の前ににあるが、実体は別のものと考えるかたち。 ▽鏡に映る像 ◇『源氏物語』総角「常よりわがおもかげに恥づるころなれば、うとましと見たまひてむも、さすがに苦しきは、いかなるにか」

▽別の人を思い起こさせる容貌など。 ◇『平家物語』「青嵐夢を破て、その面影もみえざりけり」