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さち

さち(矢、幸)[sati]←[satu]

◯鏃(やじり)の矢の意。その矢は糧をもたらす。[satu]から[sati]に音が変わるとともに、幸福の意味をもつようになった。

◆「咲き」「幸ひ[sakihahi]」は植物の繁茂のよってもたらされる糧と幸福であるのに対し、「さち」は狩猟によってもたらされるものとこと。日本列島弧で農耕がはじまる前からの古い言葉。矢という道具のもつ獲物を捕る威力、霊力も意味する。

※朝鮮語<sal>(矢)由来。

▼狩りや漁の道具。弓矢や釣針。また道具のもつ威力。 ◇『古事記』上「火遠理命、其の兄火照命に、『各佐知(サチ)を相易へて用ゐむ』と謂ひて、三度乞ひたまへども、許さざりき」 ◇『日本書紀』神代一〇「兄火闌降命(ほのすそりのみこと)、自らに海幸有(ま)します」

▽漁や狩の物の多いこと。また、その獲物。 ◇『日本書紀』神代「海に入(のぞ)みて魚を釣る。倶に幸を得ず」 ◇海の幸、山の幸

▼幸福をいう。 ◇『常陸風土記』多珂郡「同(とも)に祥福<俗語に佐知(サチ)と云ふ>を争へり」 ◇「幸あれと祈る」