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たま

たま(魂、霊、魄)[tama]

◯「たま[tama]」は[ta]と[ma]からなる。[ta]は「たなごころ(掌)」と同じく「て(手)[te]」のはたらきを表す。[ma]は「むすぶ(結ぶ)」行為の根拠を意味する。つまり、「たま」は「はたらいて実を結ぶ」ことが実現する根拠を指示した。

◆いのちの本質、生命力の源泉。 「たま(玉)」と同語源。「たま(玉)」は「たま(魂)」の憑代(よりしろ)と考えられた。

「はたらいて実を結ぶ」ことを「する[su]」ものが「たましい(魂)[tamasi]」であり、稲の穀霊が原義である。また「はたらいて実を結ぶ」ものを分かつことが「たまわる(賜る)」になる。

※折口信夫は言う。

昔の人が考えているたまは、威力のある魂が物の中に内在してゐて、それを發揮して人の體に入れる、さうするとはじめて靈力を發揮するといふ考え方、魂が動物の體を通してくることも、また物質の中に這入つて、人間に發揮させることもある。(『古代人の信仰』昭和十七年二−五月『惟神道』第二巻第二−四號)

たまの方は、これが分化して、かみものになったらしい。(『原始信仰』昭和六年九月『郷土科學講座1』)

古代人の「たま」は折口信夫がいう以上に「労働とその結果」に深く関わる言葉である。

▼人を見守り助ける人の魂。 ◇「みたま(御霊)」「おおみたま(大御霊)」 ◇「たまじわう(霊)」「たままつる(霊祭)」 ◇『万葉集』四〇九四「吾が主のみ魂賜ひて春さらば奈良の都に召上(めさ)げたまはね」

▼体内から拔けだして動く(遊離)霊 ◇「にぎたま(和魂)」「ことだま(言霊)」「ひとだま(人魂)」 ◇『万葉集』三〇〇〇「魂合はば相寢むものを小山田の鹿田(ししだ)禁(も)るごと母し守(も)るごと」 ◇『万葉集』三二七六「天地に思ひ足らはし玉相者(たまあはば)君来ますやと」 ◇『古今集』四四八「空蝉のからは木ごとにとどむれどたまのゆくへをみぬぞかなしき」