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つくる

つくる[tukuru]

◯[tu]は「て(手)[te]」の働き、[ku]は「食う」こと、[ru]はそれを実現すること。これによって、あるものがなるように、その土台に対して必要な条件を整えること。あるものや「土台」が文中で明示されなくて作ること自体が目的のようになっていても、常にそこでは、何のために作るのかが、意識されている。

[tukuru]はたらきの根拠が「ところ(所)[tokoro]」である。

※「手(て)」[te]←[ta] はタミル語<tol>起源。「つくる」はこの語を起源に、弥生期に熟成。

◆人が自然から生きる糧を得るのは、「よくつくる」ことによって「よくなる」からであり、「つくる」は人と自然との関わりの基本を表わす。

▼田を耕す。 ◇『古事記』下・歌謡「あしひきの、山田を豆久里(ツクリ)」 ◇『万葉集』一〇・二二一九「あしひきの山田佃(つくる)子ひでずとも縄だにはへよ守(も)ると知るがね」 ◇「米作りは田を作ることにはじまる」

▽栽培する。 ◇『延喜式』祝詞‐竜田風神祭「天の下の公民の作り作る物は、五(いつくさ)の穀(たなつもの)を始めて、草の片葉に至るまで」

▽材料から別の新しいものを生み出す ◇『古事記』上・歌謡「八雲立つ出雲八重垣妻籠みに八重垣都久流(ツクル)その八重垣を」

▽加工する。 ◇『源氏物語』浮船「この籠(こ)は、金(かね)をつくりて」 ◇『今昔物語』二・二六「魚を置きて作らむとす」 ◇酒造り

▽文字に書き記す。 ◇小説を作る。書類を作る。 ◇『源氏物語』須磨「よもすがらまどろまず文(ふみ)つくりあかし給ふ」 ◇短歌(俳句)を作る。 ◇『宇津保物語』楼上下「時につけつつつくりあつめ給へる詩」

▼何かがなるように何々をつくる。 ◇ひとづくり、まちづくり、金をつくる、子をつくる。

▼「荒れ地を耕す」ことがつくるの原義であるが、ここから展開して、「自然なままではないようにする」意が生まれた。 ◇「作り事」「つくり笑顔」

−つくり「つくる」の連用形名詞化。作られたものそのものを指す(刺身を「つくり」という類)とともに、「つくれらたものの様」を表す。 ◇しっかりしたつくりの家。

※「かまえ」が表面であるのに対して、「つくり」は内部を示す。「かまえ(構)」と「つくり(造)」をあわせて「構造」である。