◯「甲は乙」は、甲が、その固有な性質(の一つ)として,乙をもっていることを示す。
※タミル語<vay>由来。普遍的な命題の題目、を示す。
◆「甲は乙」は甲が既知であって、それを話者が話しの主題として持ちだし、それが乙という内容をもっていることを示す。いくつもの内容のうちその一つとして確かにもっている,という意味。「甲が乙」は逆に乙が既知であり、甲がその既知なる性質をもつことを述べる。
◇「私は山田です」私の存在は既知であり,その名字が不明なときに、それを名のる。 ◇「私が山田です」山田という名字のものがいることは既知であるが,誰であるかがわからないとき、「誰」を示す。
▼甲が体言。乙は甲を主題とする述部である。 ▽叙述の題目を提示する。 ◇『万葉集』二「国原は(波)煙立ち立つ」 ◇『万葉集』四四二五「防人に行くは(波)誰が背と問ふ人を」 ◇『古事記』上・歌謡「青山に鵺(ぬえ)は(波)鳴きぬ」
▽いくつかある中からとくに取り立てて一つを示す。 ◇『源氏物語』桐壺「ものの心知りたまふ人は、かかる人も世に出でおはするものなりけりと、あさましきまで目を驚かしたまふ」 ◇「私はこのように考えます」 ◇「このことはそのように言えるが、他のことは言えない」
▽対比すべき事柄を言外におくことにより強める。 ◇『万葉集』八二一「飲みての後は(波)散りぬともよし」
▽複合動詞の中間に入り、あるいは活用語の連用形・副詞などを受けて強調し、打消または逆接の表現に続く。 ◇『万葉集』一八〇七「髪だにも掻き者は梳(けづ)らず」
▽形容詞および打消の助動詞「ず」の連用形を受け、仮定条件を表す。 ◇『万葉集』四〇三九「布勢の浦を見ずは(波)上(のぼ)らじ年は経ぬとも」
▽連体修飾の文節を受け、対比的に被修飾語との関係を強める。 ◇『方丈記』「一条よりは南、九条より北」
▽地名に関して、それを含むさらに広い地域を先に提示する特殊な用法。
◇「東京は神田の生まれ」