◯ふゆにこもり、それがあけていのちあふれる新たな営みの季節となること。
※語根[far]は「はるか(遙か)」、「はらう(払う)」、「はる(墾る)」、「はる(晴る)」「はら(原)」などの語根[far]と同源。
※名義抄の時代になると、「はる(張る)」とはアクセントが異なるが、「はる(張る)」には芽を出すこと、萌え出るの意味があり、語根[far]は同じである。
◆冬が明けて訪れる季節。はなやかで盛んなとき、その状態。
▼新暦では三、四、五月、旧暦では立春から立夏までの一、二、三月をいい、気象学的には春分から夏至までをいう。 (旧暦では立春と新年がほぼ同じであるところから)特に、新年。正月。
▼若くて勢いの盛んな時。得意の時。最盛期。 ◇「わが世の春」
【熟語】
「春かたまけて」春が近づいて。また、春になるのを待ち受けて。*万葉‐八三八「鶯鳴くも「波流加多麻気弖(ハルカタマケテ)」
「春さる」(「さる」は移動する、近づくなどの意)春になる。春がやってくる。《季・春》
「春立(た)つ」春になる。春の季節にはいる。《季・春》
「春の限(かぎ)り」春の終わり。春のはて。《季・春》
「春の心(こころ)」春を人に見立てて、その春が持つ心をいう。また、春の季節の人の心。春の頃の、のどかな人の心。恋する心。春情。
「春の事(こと)」正月の準備。春仕度(じたく)。
「春の衣(ころも)」春に着る衣服。はるぎ。また、春霞を衣に見立ててもいう。
「春の杯(さかずき)」春のころ酒を飲む杯。また、三月上巳(じょうし)の曲水の宴で水に浮かべる酒杯。
「春の除目(じもく)」春に地方官を任命する儀式。⇒県召(あがためし)の除目。
「春の調(しら)べ」春に適した楽の調子。双調(そうじょう)。
「春の使(つか)い」春が来るのを告げる使い。鶯(うぐいす)をいう。
「春の戸(と)」春をとじ込めている戸。
「春の隣(となり)」春に近いこと。冬から春に移ろうとする、変わりめの時期。年の暮。
「春の鳥(とり)」鶯(うぐいす)の異称。《季・春》
「春の情(なさけ)」春のおもむき。春の風情。春の色。
「春の七草(ななくさ)」正月七日に摘んで、七草がゆに入れる七種の若菜。芹(せり)、薺(なずな)、御形(ごぎょう)、蔬フ(はこべ)、仏座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)の称。⇔秋の七草。
「春の錦(にしき)」春、百花が美しく咲いているさまを錦に見立てていう語。春向きのはなやかな錦衣。
「春の花(はな)」春の時節に咲く花。《季・春》はかない物事のたとえ。
「春の光(ひかり)」春の陽光。また、春の景色。春光。温和なさま、恵み深いさまをいう語。
「春の港(みなと)」春の行きつくところを、船が泊まる港にたとえていう。春の止まり。春の果て。《季・春》
「春の深山(みやま)」春のころの深山。和歌で「春の宮」にかけていうことが多い。
「春の目覚(めざ)め」青春期に達して、性の欲望の起こること。
「春の雪(ゆき)」春に降る雪。散る花に見立てたり、とけやすいもののたとえに用いたりする。《季・春》
「春の夜(よ)」春の短い夜。《季・春》
「春の夜の夢」春の夜に見る夢。短くはかないことのたとえ。