◯するとき(時)の範囲。するところ(所)の範囲。
◆(上代は「ほと」)何ごとかをなすときに、そのことの段階を、ある幅を持った範囲として示す語。さらに、何ごとかの範囲を示す用法に広がった。
※何らかの動作や展開など動きのあることについての範囲。「ころ(頃)」は単にあるときの前後の範囲を示す。
※タミル語<potu>由来。
▼時間的な程度を表す。 ▽動作がなされる間にすぎて行く時間。 ◇『万葉集』四三一三「青波に袖さへぬれて漕ぐ舟のかし振る保刀(ホト)にさ夜ふけなむか」
▽ある期間。時分。ころ。 ◇『万葉集』一七四〇「家ゆ出でて 三歳(みとせ)の間に 垣も無く 家滅せめやと この箱を 開きてば」 ◇『竹取物語』「月の程に成りぬれば、猶、時々はうちなげきなどす」 ◇『竹取物語』「長き契りのなかりければ、程なく罷りぬべきなめりと思ふが、悲しく侍る也」 ◇『伊勢物語』六〇「宮仕へいそがしく、心もまめならざりけるほどの家刀自」 ◇『伊勢物語』一二〇「昔、をとこ、〈略〉人の御もとに忍びてもの聞えて、のちほどへて」
▼空間的な程度を表す。 ▽大体の距離。道のり。 ◇『古今集』三七二「わかれてはほどをへだつとおもへばや」
▽いたる所。途中。 ◇『源氏物語』松風「人に見咎められじの心もあれば、道のほども軽らかに(質素な装いに)しなしたり」
▽ある空間に展開している有様、状態。 ◇『源氏物語』幻「梅の花の、わづかにけしきばみはじめて、雪にもてはやされたるほど、をかしきを」
▼人のことについての程度を表す。 ▽社会的、または個人的な関係の程度。身分。分際。間柄。 ◇「身の程知らず」 ◇『土佐日記』「このことば、なにとはなけれども、ものいふやうにぞきこえたる。ひとのほどにあはねば、とがむるなり」
▽年齢。成長の度合。 ▽「年の程は四十くらい」 ◇『源氏物語』絵合「ほどよりは、いみじうされ、おとなび給へり」
▽言動、性格、心情などの程度、段階。 ◇『山家集』下「思ひあまり言ひ出でてこそ池水の深き心のほどは知られめ」
▽有様、様子、調子など、人のことについての程度、段階。 ◇「御都合の程お知らせ下さい」 ◇「実力の程は疑問だ」 ◇『源氏物語』乙女「暗(くら)ければこまかには見えねど、ほどの、いとよく思ひいでらるるさまに」
▼〔副助〕(助詞化したもの)名詞、または活用語の連体形を受ける。
▽おおよその範囲、程度を表す。くらい。
◇「駅まで一キロほどある」
◇「その場にいられないほど恥ずかしい」
◇『徒然草』三一「この雪いかが見ると、一筆のたまはせぬほどの、ひがひがしからん人」