◆一つのいのちが生まれて更新されるまでの間。「よ」は「豊かさの根源としての力、生命力」を意味するとともに、「更新される生命」の一区切りを意味し、その単位としての時間の基礎となっている。
▼(節)竹などの節と節との間の中空の部分。漢字「節」を当てるが、「よ」は節と節の間を指す。「中空」は「うつろ」であり、「うつろ」は生命を生み出す場であった。『竹取物語』で竹の節と節との間に姫がいたのは、この意味。 ◇『竹取物語』「此の子を見つけて後に竹とるに、節をへだてて〈よ〉ごとに黄金ある竹を見つけること重なりぬ」
▼(代)人間の生まれて死ぬまでの間。 ◇『古事記』上・歌謡「沖つ鳥鴨著(ど)く島に我が率寝し妹は忘れじ余(ヨ)のことごとに」 ◇『万葉集』三四四八「花散らふこの向つ峰(を)の乎那の峰のひじに付くまで君が与(ヨ)もがも」 ◇『万葉集』巻九・一八〇九「親族(やかち)どち い行き集ひ永き代に 標しにせんと 遠き代に語り継がんと」 ◇『万葉集』巻十八・四〇九四「天皇の神の命(みこと)の御代かさね」
▼(世)一定の人間組織が続く間。
▽ある特定の者、また系統によって支配・統治が続く期間。 ◇明治の世、源氏の世、武家の世。 ◇『古今集』仮名序「かの御時よりこの方、年はももとせあまり、世はとつぎになんなりにける」 ◇『奥の細道』「草の戸も住替る代ぞひなの家」
▽仏説にいう過去(前世)・現在(現世)・未来(来世)の各々。また、仏法が行われる正法(しょうぼう)・像法(ぞうぼう)・末法(まっぽう)の三時期の各々。仏教思想と在来の思想とが混淆して生まれた用法。 ◇あの世に旅立つ。 ◇さきの世。 ◇『万葉集』三四八「この代(よ)にし楽しくあらば来む生(よ)には虫に鳥にも吾れはなりなむ」 ◇『源氏物語』薄雲「世はつきぬにやあらん.物心ぼそく、例ならぬ心ちなんするを」
▽人間の構成する社会。また、その中での人間関係。よのなか。
◇『万葉集』四六五「うつせみの代(よ)は常なしと知るものを」
◇『万葉集』巻十八・四一二四「世をしのぶ
◇わが欲りし雨は降りきぬかくしあらば言挙げせずとも稔は栄えむ」
◇『古今集』九五六「世を捨てて山に入る人」
◇『竹取物語』「国王の迎せごとを、まさに世に住み給はん人の、承り給はでありなむや」
◇歌は世につれ、世は歌につれ。
◇『源氏物語』総角「頼みなき御身どもにて、いかにもいかにも世になびき給へらむを」
◇『紫式部日記』「物づつみをし、いとよをはぢらひ、余り見苦しきまで児めい給へり」
◇わが世の春。
◇『伊勢物語』八七「わが世をばけふかあすかと待つかひの」
◇『万葉集』巻四・七四六「生ける世に吾はいまだ見ず言絶えてかくおもしろく縫える袋は」