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を〔辞〕

を〔辞〕[wo]

◯することを指し示す。

◆活用語の連体形または体言を目的語として指示する。

※「否も諾(を)も」のような感動詞「を」から転じたとされる。鎌倉時代以後は文語化し、和歌以外にはほとんど見られなくなる。現代語では格助詞。

▼文末にあって活用語の連体形または体言を受け、詠嘆をこめて確認する。 ◇『古事記』上・歌謡「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣袁(ヲ)」 ◇『万葉集』二〇六四「古に織りてし機をこの夕 衣に縫ひて君待つわれを」(私であるなあ。)

▽意志・希望・命令の文中にあって連用の文節を受け、指示強調する。 ◇『万葉集』三四九「今(こ)の世なる間は楽(たのしく)乎(ヲ)あらな」

▽情意の対象を詠嘆的に指示する。 ◇『万葉集』二一「紫草(むらさき)のにほへる妹乎(ヲ)憎くあらば」

▽「…を…み」の形で対象を提示する。…が…なので。 ◇『古事記』下・歌謡「梯立の 倉梯山袁(ヲ)嶮しみと岩懸きかねて 我が手取らすも」

▼感動の対象を提示する間投助詞「を」の用法から発展した。体言またはそれに準ずる語に付く。

▽目的格を指示する。 ◇「仕事をする」 ◇「そんなことを言われても困る」 ◇『古事記』上・歌謡「太刀が緒も いまだ解かずて 襲(おすひ)遠(ヲ)も いまだ解かねば」 ◇『源氏物語』玉鬘「幼き心地に母君を忘れず、をりをりに、『母の御もとへ行くか』と問ひたまふにつけて」

▽動作の成立する時や場所、起点を表す。経過を示す。 ◇「京都を過ぎた」 ◇『古事記』中・歌謡「新治 筑波袁(ヲ)過ぎて」

▽動作の対象を表す。…に。 ◇『古事記』下・歌謡「大坂に 遇ふや嬢子(をとめ)袁(ヲ)道問へば 直ちには告(の)らず」

下の動詞と同意の体言を受けて一種の慣用句を作る。 ◇『万葉集』三四一四「伊香保ろの八尺(やさか)の堰塞(ゐで)に立つ虹(のじ)の顕ろまでもさ寝乎(ヲ)さ寝てば」

▼活用語の連体形を受ける格助詞「を」から派生した。活用語の連体形を受けて句と句を接続する。逆接、順接、また因果関係のない場合もある。 ◇『源氏物語』桐壺「おのづからかろき方にも見えしを、この御子生まれ給ひて後はいと心ことにおもほしおきてたれば」 ◇『万葉集』五八二「丈夫(ますらを)もかく恋ひけるを 手弱女の恋ふる情(こころ)に比(たぐ)ひあらめやも」



2014-10-08