◯いまあるものが、なくなったり、いなくなったりするとき、もっとあってほしい、いてほしいと思うこころのさま。
◆自分が手に入れているもの(何らかの自分の領域に入っているもの)が大切で手放すことが出来ないこと、その感情。おしむのは、それを大切に思うからである。
▼なくなることが、もったいない、残念に思う。 ◇『万葉集』一六〇四「秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒るらしく惜しも」 ◇『栄華物語』三二「今年ぞ二十九にならせ給へば、まだいと盛りにをしき御程なり」
▼手放すのがつらい。いとしくて離れがたい。 ◇『万葉集』三九九〇「わが背子は玉にもがもな手に巻きて見つつ行かむを置きて行かば惜し」 ◇『源氏物語』澪標「かねてより隔てぬなかとならはねど別れはをしきものにぞありける」
−【おしむ】 「おし」の動詞形。
▼捨てがたく思う。愛惜する。 ◇『万葉集』三八一三「わが命はおしくもあらず丹(に)つらふ君に寄りてそ長く欲(ほ)りする」 ◇『万葉集』四四〇八「今日だにも言問ひせむと乎之美(ヲシミ)つつ悲しび坐せば」
▼ある行為(手放す行為)をいやがる。 ◇金(労)を惜しむ。 ◇協力(賛辞)を惜しまない。 ◇『枕草子』八七「御仏供のおろしたべんと申すを、この御坊たちのをしみ給ふ」
▼いとしく思う。いつくしむ。大切なものに思う。大事にする。尊重する。名残つきない。
◇寸暇を惜しむ。
◇『万葉集』三九九〇「わが脊子は玉にもがもな手に巻きて見つつ行かむをおきて行かばをし」
◇『宇治拾遺物語』二〇四「今よりは紅葉のもとにやどりせじおしむに旅の日かずへぬべし」
◇『平家物語』五「恥をもおもひ、名をもおしむ程のものは」