2019年入試問題研究に戻る名大理系第4問解答
(1) $ n=3 $ のとき,長さ1のサイクルを含む順列は, $ a_i=i $ となる項がある順列なので, \[ (1,\ 2,\ 3),\ (1,\ 3,\ 2),\ (3,\ 2,\ 1),\ (2,\ 1,\ 3) \] の4個ある.よってその確率は $ \dfrac{4}{3!}=\dfrac{2}{3} $ である. 長さ3のサイクルがあるものは $ 6-4=2 $ 個である.
(2) $ 1,\ 2,\ \cdots,\ n $ を一列に並べた順列のうち,長さ $ n $ のサイクルである順列の個数を $ x_n $ とおく.
長さ $ n $ のサイクルがあるとき,新たに $ a_{n+1} $ を加えて長さ $ n+1 $ のサイクルを構成する方法は, $ a_i=n+1,\ a_{n+1}=a_i\ (1\leqq i \leqq n) $ と, $ n $ 通りある. よって, \[ x_{n+1}=nx_n \] がなりたつ. $ x_1=1 $ なので, $ x_n=(n-1)! $ である.
$ x_4=3!=6 $ である.長さ3のサイクルがあるものは(1)より, $ 6-4=2 $ 個である.それは $ (2,\ 3,\ 1) $ , $ (3,\ 1,\ 2) $ である.これをもとに上記の手順で $ x_4 $ 個の順列を作ると, \[ \begin{array}{l} (4,3,1,2),\ (2,4,1,3),\ (2,3,4,1),\ \\ (4,1,2,3),\ (3,4,2,1),\ (3,1,4,2) \end{array} \] である.
※ $ x_n $ は次のようにしても求まる.
サイクルはどこからはじめても同じサイクルなので,長さ $ n $ のサイクルである順列は, \[ a_1=k_1,\ a_{k_1}=k_2,\ \cdots,\ a_{k_{n-2}}=k_{n-1},\ a_{k_{n-1}}=1 \] と, $ k_1,\ k_2,\ \cdots,\ k_{n-1} $ に $ 2,\ 3,\ \cdots,\ n $ をあてはめるだけある. よって, $ x_n=(n-1)! $ である.
(3) 正の実数で定義された関数 $ \dfrac{1}{x} $ は単調減少であるから, 区間 $ (j,\ j+1] $ で $ \dfrac{1}{j} >\dfrac{1}{x} $ がなりたつ. よって, \[ \int_j^{j+1}\dfrac{1}{j}\,dx >\int_j^{j+1}\dfrac{1}{x}\,dx \] つまり, \[ \dfrac{1}{j} >\log(j+1)-\log j \] である.これを $ k\leqq p\leqq n $ で加えて, \[ \sum_{j=k}^n\dfrac{1}{j} >\sum_{j=k}^n\left\{\log(j+1)-\log j \right\}=\log(n+1)-\log k \] である.
(4) $ j\geqq \dfrac{n+1}{2} $ とする.長さ $ j $ のサイクルは存在しても1個である. それを構成する項を $ a_l,a_2,\cdots,a_n $ から選ぶ.それは $ {}_n \mathrm{C}_j $ 通りある. それを用いて長さ $ j $ のサイクルを作る.それは $ (j-1)! $ 通りある.
残る $ n-j $ は任意であり, $ (n-j)! $ 通りある.よって, 長さ $ j $ のサイクルが存在する場合の数は \[ {}_n \mathrm{C}_j\cdot(j-1)!\cdot(n-j)!=\dfrac{n!}{j!(n-j)!}\cdot(j-1)!\cdot(n-j)!=\dfrac{n!}{j} \] 通りある.よって,長さ $ j $ のサイクルが存在する確率は $ \dfrac{1}{j} $ である. これより, 選んだ順列が長さ $ \dfrac{n+1}{2} $ 以上のサイクルを含む確率 $ p $ は(3)を用いて, \[ \sum_{j=\frac{n+1}{2}}^n\dfrac{1}{j} >\log(n+1)-\log \dfrac{n+1}{2}=\log 2 \] である.