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諸命題の証明

パスカルの補題I,つまり円の場合のパスカルの定理はいくつかの初等的方法で示された.『円錐曲線試論』を読み解くという観点から,それに続く命題群も手持ちの方法で示してみよう.それは基本的に複比の方法である.複比の方法は,パスカルの時代からその後大きく洗練されたとはいえ,パスカルがデザルグから引き継いで駆使した方法を原型とするもっとも射影幾何的な方法である.

また,命題のうちには,円の場合に示すことが補題IIによって円錐曲線でも成立するものと,円錐曲線への一般化を吟味しなければならないものがある.円の場合で考えながら,一般化への課題も考える.また,命題5はユークリッド平面内の有心円錐曲線で考えることにしよう.用いる方法は複比の方法である.また,パスカルはギリシア以来の合成比を用いて表現している.その命題群を今風に言い直して円の場合に再掲する.また線分は有向線分として考えることにする.

命題I

本命題を円の場合に再掲する.

命題 7        円の外部の点Aから円に交わる2直線を引き,交点をP,KとQ,Vとする.さらに円周上の2点O,Nをとり,KO,KNと直線AQの交点をT,S,またVN,VOと直線APの交点をL,Mとする.このとき等式

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{PM}}{\mathrm{MA}}\cdot\dfrac{\mathrm{AS}}{\m...
...mathrm{PL}}{\mathrm{LA}}\cdot\dfrac{\mathrm{AT}}{\mathrm{TQ}}
\end{displaymath}
が成り立つ. ■

証明      証明すべき等式は

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{PM}}{\mathrm{PL}}\cdot
\dfrac{\mathrm{AL}}{...
...thrm{AT}}{\mathrm{AS}}\cdot
\dfrac{\mathrm{QS}}{\mathrm{QT}}
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
(\mathrm{P,A;M,L})=(\mathrm{A,Q;T,S})
\end{displaymath}

と同値である.ところが補題5によって

\begin{displaymath}
(\mathrm{P,A;M,L})=\mathrm{V}(\mathrm{P,Q;O,N})\\
=\mathrm{K}(\mathrm{P,Q;O,N})
=(\mathrm{A,Q;T,S})
\end{displaymath}

が成り立ち,本命題は成立する. □

命題II

まずその前半である.その内容と同値な今風の等式で示す.

命題 8        3直線DF,DG,DHがあり,直線AP,ARがこの3直線を切る点をF,G,H,C,$\gamma$,Bとする.このとき,

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{FG}}{\mathrm{C\gamma}}\cdot\dfrac{\mathrm{A}...
...mathrm{AB}}{\mathrm{AH}}
=
\dfrac{\mathrm{FD}}{\mathrm{CD}}
\end{displaymath}
が成り立つ. ■

証明     第一の等式は

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{FG}}{\mathrm{FH}}\cdot\dfrac{\mathrm{AH}}{\m...
...ma}}{\mathrm{CB}}
\cdot\dfrac{\mathrm{AB}}{\mathrm{A}\gamma}
\end{displaymath}
と同値である.つまり

\begin{displaymath}
(\mathrm{F,A;G,H})=
(\mathrm{C,A};\gamma,\mathrm{B})
\end{displaymath}
である.これは補題4によって成立する.第二の等式は

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{HF}}{\mathrm{AH}}\cdot\dfrac{\mathrm{DC}}{\mathrm{FD}}
\cdot\dfrac{\mathrm{BA}}{\mathrm{CB}}=-1
\end{displaymath}
と同値である.ところがこれは, $\bigtriangleup \mathrm{ACF}$とその辺の延長を直線HBDが切っているときのメネラウスの定理(補題1)そのものである. □

次に命題IIの後半である.その内容を円の場合に示す.

命題 9        点E,Dを通る一つの円が直線AH,ABを点P,K,R,$\psi$で切るならば,

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{EF}\cdot\mathrm{FG}}{\mathrm{EC}\cdot\mathrm...
...{\mathrm{AR}\cdot\mathrm{A}\psi}{\mathrm{AK}\cdot\mathrm{AP}}
\end{displaymath}

が成立する. ■

証明      命題8より

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{EF}\cdot\mathrm{FG}}{\mathrm{EC}\cdot\mathrm...
...rac{\mathrm{EF}\cdot\mathrm{FD}}{\mathrm{EC}\cdot\mathrm{CD}}
\end{displaymath}

であるから,

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{FK}\cdot\mathrm{FP}}{\mathrm{CR}\cdot\mathrm...
...rac{\mathrm{EF}\cdot\mathrm{FD}}{\mathrm{EC}\cdot\mathrm{CD}}
\end{displaymath}

を示せばよい.

六角形 $\mathrm{D}\psi\mathrm{KEPR}$においてパスカル線 $\displaystyle \mathrm{D}\mathrm{K}\mathrm{R}\atop\displaystyle \mathrm{\psi}\mathrm{E}\mathrm{P}$を引く.交点を図のように順にL,M,Nとする. $\bigtriangleup \mathrm{ACF}$と, 直線L$\psi$K,直線DMP,直線NRE,および直線LMNに関してメネラウスの定理を用いる.

\begin{eqnarray*}
\mathrm{L}\psi\mathrm{K}&:&
\dfrac{\mathrm{LC}}{\mathrm{FL}}...
...hrm{MA}}{\mathrm{CM}}\cdot
\dfrac{\mathrm{NF}}{\mathrm{AN}}=-1
\end{eqnarray*}

を得る.第一,二,三式をかけ合わせ第四式で割ることにより

\begin{displaymath}
\dfrac{\psi\mathrm{A}}{\mathrm{C}\psi}\cdot
\dfrac{\mathrm...
...rm{EC}}{\mathrm{FE}}\cdot
\dfrac{\mathrm{RA}}{\mathrm{CR}}=1
\end{displaymath}

これは証明すべき等式そのものである. □

実は円の場合,方べきの定理

\begin{eqnarray*}
&&\mathrm{CR}\cdot\mathrm{C}\psi=\mathrm{CE}\cdot\mathrm{CD}\...
...
&&\mathrm{AR}\cdot\mathrm{A}\psi=\mathrm{AP}\cdot\mathrm{AK}
\end{eqnarray*}

より証明すべき等式が得られる.しかし一般の円錐曲線ではこれらの等式は成立しない.それに対してパスカルの定理を根拠にして,メネラウスの定理を用いて示した本証明は,メネラウスの定理を吟味してゆけば一般化に耐える.この証明は1803年,カルノー(Lazare Nicolas Marguerite Carnot, 1753年5月13日〜 1823年8月2日) が円錐曲線で示した方法によっている.カルノーはフランス革命期を生きぬいた政治家,軍人にして数学者であった.

命題III

これはパスカルの原文の図は円であるが,命題IIIでは円錐曲線で述べられている. 命題を円として再掲する.

命題 10        4直線AC,AF,EH,ELが点N,P,M,Oで交わり,一つの円がこれらの直線を点C,B,F,D,H,G,L,Kで切るなら,

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{MC}\cdot \mathrm{MB}}{\mathrm{PF}\cdot \math...
...c{\mathrm{EH}\cdot \mathrm{EG}}{\mathrm{EK}\cdot \mathrm{EL}}
\end{displaymath}
が成り立つ. ■

証明      命題9の証明で得られた等式は点

\begin{displaymath}
\mathrm{A}-\mathrm{EFCD}-\mathrm{PK}\psi\mathrm{R}
\end{displaymath}

の組に対してであった.これと同様の等式が本命題においては

\begin{eqnarray*}
&&\mathrm{A}-\mathrm{LMOK}-\mathrm{BCFD}\\
&&\mathrm{E}-\mathrm{DOPF}-\mathrm{KLHG}
\end{eqnarray*}

に対してそれぞれ得られる.すなわち,

\begin{eqnarray*}
&&\dfrac{\mathrm{FA}}{\mathrm{OF}}\cdot
\dfrac{\mathrm{CM}}{...
...thrm{DP}}{\mathrm{OD}}\cdot
\dfrac{\mathrm{GE}}{\mathrm{PG}}=1
\end{eqnarray*}

第一式を第二式で割ると

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{FA}}{\mathrm{FP}}\cdot
\dfrac{\mathrm{CM}}{...
...rm{EK}}{\mathrm{DP}}\cdot
\dfrac{\mathrm{PG}}{\mathrm{GE}}=1
\end{displaymath}

を得る.これは証明すべき等式そのものである. □

本命題も円の場合は方べきの定理からただちに得られる.しかし,カルノーの方法にもとづくこの証明でないと一般の円錐曲線の場合に耐えられない.

命題IV

本命題はデザルグによる.

命題 11       4点K,N,O,Vを通る円錐曲線を直線R$\psi$で切る.KN,KOとの交点をx,yとし, VN,VOとの交点をZ,$\delta$とすれば

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{ZR}\cdot \mathrm{yR}}{\mathrm{Z}\psi\cdot \m...
... \mathrm{R}\cdot \mathrm{xR}}{\delta\psi\cdot \mathrm{x}\psi}
\end{displaymath}
が成り立つ. ■

証明      本等式は

\begin{displaymath}
\dfrac{\mathrm{ZR}}{\mathrm{Z}\psi}\cdot\dfrac{\delta\psi}{...
...}}{\mathrm{x}\psi} \cdot
\dfrac{\mathrm{y}\psi}{\mathrm{yR}}
\end{displaymath}

つまり複比の等式

\begin{displaymath}
(\mathrm{Z},\delta;\psi,\mathrm{R})=
(\mathrm{x},\mathrm{y};\mathrm{R},\psi)
\end{displaymath}

と同値である.ところが補題5によって

\begin{displaymath}
(\mathrm{Z},\delta;\psi,\mathrm{R})
=\mathrm{V}(\mathrm{N}...
...O};\psi,\mathrm{R})
=(\mathrm{x},\mathrm{y};\mathrm{R},\psi)
\end{displaymath}

なので,成立する.  □

後に射影直線の射影変換を定義する. 射影変換は複比を変えない. 4点 $\mathrm{Z},\ \delta,\ \psi,\ \mathrm{R}$ $\mathrm{y},\ \mathrm{x},\ \mathrm{R},\ \psi$に変換する射影変換は, もういちどおこなうと $\psi,\ \mathrm{R}$を固定し,恒等変換になる. このように二回くりかえすと恒等変換になる射影変換を対合といい, 対合で対応する点も対合という.つまり この命題は円錐曲線を直線で切って得られる点の組

\begin{displaymath}
(\mathrm{R},\ \psi),
(\mathrm{Z},\ \mathrm{y}),
(\delta,\ \mathrm{x})
\end{displaymath}

はそれぞれ対合であることを主張している.

対合を発見したのはデザルグである.

一直線上に点Oが存在し,

\begin{displaymath}
\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OA'}
=\mathrm{OB}\cdot\mathrm{OB'}=
\mathrm{OC}\cdot\mathrm{OC'}
\end{displaymath}

となるようにできるとき,点列

\begin{displaymath}
(\mathrm{A},\ \mathrm{A'}),
(\mathrm{B},\ \mathrm{B'}),
(\mathrm{C},\ \mathrm{C'})
\end{displaymath}

は対合をなすという.

これがデザルグの発見した概念である.デザルグはこの概念の下,1639年,円錐曲線に内接する四辺形を一直線で切って得られる6点は対合をなすことを発見,この証明の形で証明した.

命題V

命題Vは有心円錐曲線の定理である.アポロニウス以来の円錐曲線論を,デカルトによる座標幾何はまだはじまっていない時代に,座標の方法に近い手段で考えている.ここでは,楕円または双曲線が直交座標での標準形:

\begin{displaymath}
\dfrac{x^2}{a^2}\pm \dfrac{y^2}{b^2}=1\quad +:楕円,―:双曲線
\end{displaymath}

で表されているとし,双曲線の場合 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=-1$となる共役双曲線をあわせて考える.

補題 9        有心円錐曲線$C$の直径$d$をとる.$d$に平行な弦の中点の軌跡はふたたび直径$d'$となる.$d'$$d$が有心円錐曲線と交わる点における接線と平行になる.$d'$$d$に共役な直径という. ■

証明      $d$$x$軸や$y$軸の場合は明らかなので,そうではないとし,$d$の方程式を$y=mx$とおく. $d$と平行な直線を$y=mx+k$とおく.円錐曲線との交点の$x$座標は

\begin{displaymath}
\dfrac{x^2}{a^2}\pm \dfrac{(mx+k)^2}{b^2}=1
\end{displaymath}

で与えられる.これを整理して

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{1}{a^2}\pm \dfrac{m^2}{b^2} \right)x^2
\pm \dfrac{2mk}{b^2}x+\dfrac{k^2}{b^2}-1=0
\end{displaymath}

この二次方程式の2解を $\alpha,\ \beta$とする.解と係数の関係から

\begin{displaymath}
\alpha+\beta=\dfrac{\mp \dfrac{2mk}{b^2}}{\dfrac{1}{a^2}\pm \dfrac{m^2}{b^2}}
\end{displaymath}

弦の中点を$(X,\ Y)$とすると

\begin{eqnarray*}
X&=&\dfrac{1}{2}(\alpha+\beta)
=\dfrac{\mp \dfrac{mk}{b^2}}{...
... \dfrac{m^2}{b^2}}{\mp \dfrac{m}{b^2}}X
=\mp\dfrac{b^2}{ma^2}X
\end{eqnarray*}

これは$d$に平行な弦の中点の軌跡はふたたび直径$d'$となることを示している.

直径$d$が円錐曲線と交わる点を$(x_1,\ y_1)$とすると,$y_1=mx_1$であって,交点での接線は

\begin{displaymath}
\dfrac{x_1x}{a^2}\pm\dfrac{y_1y}{b^2}=1
\end{displaymath}

である.よってその傾きは

\begin{displaymath}
\mp\dfrac{b^2x_1}{a^2y_1}=\mp\dfrac{b^2}{ma^2}
\end{displaymath}

なので$d'$の傾きと一致している. □

補題 10        楕円の直径$d$とそれに共役な直径$d'$をとる.楕円と$d$$d'$の交点のそれぞれ一つ $\mathrm{P},\ \mathrm{P}'$をとり $\mathrm{OP}=a'$ $\mathrm{OP'}=b'$とする.このとき,

\begin{displaymath}
{a'}^2+{b'}^2=a^2+b^2,\ \quad
\bigtriangleup \mathrm{OPP'}の面積=\dfrac{ab}{2}
\end{displaymath}

が成りたつ. ■

証明      $d$の傾きを$m$とすると$d'$の傾きは $-\dfrac{b^2}{ma^2}$である. $\mathrm{P}(x_1,\ y_1)$ $\mathrm{P'}(x_2,\ y_2)$とする. $y_1=mx_1$ $y_2=-\dfrac{b^2}{ma^2}x_2$である. $\mathrm{P},\ \mathrm{P'}$はこの曲線上の点なので,

\begin{displaymath}
\dfrac{{x_1}^2}{a^2}+\dfrac{m^2{x_1}^2}{b^2}=1,\quad
\d...
...}{b^2}=
\dfrac{{x_2}^2}{a^2}+\dfrac{b^2{x_2}^2}{m^2a^4}=1,
\end{displaymath}

よって

\begin{eqnarray*}
{a'}^2+ {b'}^2&=&{x_1}^2+{y_1}^2+({x_2}^2+{y_2}^2)
=(1+m^2){...
...^2a^4}}=
\dfrac{(1+m^2)a^2b^2+m^2a^4+b^4 }{m^2a^2+b^2}=a^2+b^2
\end{eqnarray*}

次に

\begin{eqnarray*}
\bigtriangleup \mathrm{OPP'}&=&\dfrac{1}{2}\left\vert x_1y_2-...
...rac{1}{2}\left\vert\dfrac{x_1x_2(m^2a^2+b^2)}{ma^2} \right\vert
\end{eqnarray*}

ここで補題前半の計算より

\begin{displaymath}
{x_1}^2{x_2}^2=\dfrac{a^2b^2}{m^2a^2+b^2}\cdot\dfrac{m^2a^4}{m^2a^2+b^2}
\end{displaymath}

なので

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{OPP'}=\dfrac{1}{2}ab
\end{displaymath}

である. □

$\mathrm{P}$の媒介変数表示が $(a\cos\theta,\ b\sin\theta)$であるとき, 点$\mathrm{P}'$の媒介変数表示は

\begin{displaymath}
\left(a\cos\left(\theta+\dfrac{\pi}{2}\right),\ b\sin\left(\theta+\dfrac{\pi}{2}\right)\right)=(-a\sin\theta,\ b\cos\theta)
\end{displaymath}

になる.

双曲線の場合は$\mathrm{P'}$は共役双曲線上に現れる.

補題 11        双曲線の直径$d$とそれに共役な直径$d'$をとる.双曲線と$d$の交点の一つを$\mathrm{P}$$d'$と共役双曲線の交点の一つを$\mathrm{P}'$とし, $\mathrm{OP}=a'$ $\mathrm{OP'}=b'$とする.このとき,

\begin{displaymath}
{a'}^2-{b'}^2=a^2-b^2,\ \quad \bigtriangleup \mathrm{OPP'}の面積=\dfrac{ab}{2}
\end{displaymath}
が成りたつ. ■

証明      $d$の傾きを$m$とすると$d'$の傾きは $\dfrac{b^2}{ma^2}$である. $\mathrm{P}(x_1,\ y_1)$ $\mathrm{P'}(x_2,\ y_2)$とする. $y_1=mx_1$ $y_2=\dfrac{b^2}{ma^2}x_2$である. $\mathrm{P},\ \mathrm{P'}$はこの曲線上の点なので,

\begin{displaymath}
\dfrac{{x_1}^2}{a^2}-\dfrac{m^2{x_1}^2}{b^2}=1,\quad
\d...
...{b^2}=
\dfrac{{x_2}^2}{a^2}-\dfrac{b^2}{m^2a^4}{x_2}^2=-1,
\end{displaymath}

よって

\begin{eqnarray*}
{a'}^2-{b'}^2&=&{x_1}^2+{y_1}^2-({x_2}^2+{y_2}^2)
=(1+m^2){x...
...4}}=
\dfrac{-(1+m^2)a^2b^2+m^2a^4+b^4 }{m^2a^2- b^2}
=a^2-b^2
\end{eqnarray*}

次に

\begin{eqnarray*}
\bigtriangleup \mathrm{OPP'}&=&\dfrac{1}{2}\left\vert x_1y_2-...
...rac{1}{2}\left\vert\dfrac{x_1x_2(m^2a^2-b^2)}{ma^2} \right\vert
\end{eqnarray*}

ここで補題前半の計算より

\begin{displaymath}
{x_1}^2{x_2}^2=\dfrac{a^2b^2}{-m^2a^2+b^2}\cdot\dfrac{-m^2a^4}{m^2a^2-b^2}
\end{displaymath}
なので

\begin{displaymath}
\bigtriangleup \mathrm{OPP'}=\dfrac{1}{2}ab
\end{displaymath}
である. □

補題 12        $d$$d'$上の点 $\mathrm{S},\ \mathrm{T}$を, $\mathrm{OS}=x,\ \mathrm{OT}=y$であるようにとる.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OS}}+\overrightarrow{\mathrm{OT}}=\overrightarrow{\mathrm{OQ}}
\end{displaymath}

とする.点$\mathrm{Q}$がこの円錐曲線上の点であるための条件は

\begin{displaymath}
\dfrac{x^2}{{a'}^2}\pm \dfrac{y^2}{{b'}^2}=1
\end{displaymath}

である. つまりこれが$d$$d'$を斜交軸とする斜交座標による円錐曲線の方程式である. ■

証明      記号はこれまでと同様にとる.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=x\dfrac{\overrightarrow{\mathr...
...dfrac{x_2y}{b'},\
\dfrac{y_1x}{a'}+\dfrac{y_2y}{b'} \right)
\end{displaymath}

したがって点$\mathrm{Q}$が円錐曲線上の点であることは

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{a^2}\left(\dfrac{x_1x}{a'}+\dfrac{x_2y}{b'} \righ...
...ac{1}{b^2}\left(\dfrac{y_1x}{a'}+\dfrac{y_2y}{b'} \right)^2=1
\end{displaymath}

である.ここで

\begin{displaymath}
左辺=
\left(\dfrac{{x_1}^2}{a^2}\pm \dfrac{{y_1}^2}{b^2}...
...ac{x_1x_2}{a^2}\pm\dfrac{y_1y_2}{b^2} \right)\dfrac{xy}{a'b'}
\end{displaymath}

ところが

\begin{displaymath}
\dfrac{x_1x_2}{a^2}\pm\dfrac{y_1y_2}{b^2}=
\dfrac{x_1x_2}{a^2}\pm\dfrac{mx_1\left(\mp\dfrac{b^2x_2}{ma^2} \right)}{b^2}=0
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
\dfrac{x^2}{{a'}^2}\pm \dfrac{y^2}{{b'}^2}=1
\end{displaymath}

を得る. □

そのうえで,命題Vでパスカルが言いたかったと思われることを命題とする.

命題 12        平面上にCを中心とする双曲線,楕円あるいは円がある.直線ABが点Aでこの円錐曲線に接している.A$'$をCA$'$がCAに対する共役直径になる円錐曲線上の点とする.直径CAを引き,直線ABをCA$'$に等しくとる.またCBを引く.直線ABに平行な任意の直線DEを引く.円錐曲線をEで,直線AC,CBを点D,Fで切る.円錐曲線が楕円あるいは円なら,直線DE,DFの平方の和は直線ABの平方の和に等しい.双曲線の場合には,同じ直線DE,DFの平方の差が直線ABの平方に等しい. ■

証明      記号など補題を踏襲する. 楕円の場合で示す. すると

\begin{displaymath}
\mathrm{CA}=a',\ \mathrm{CA'}=b'
\end{displaymath}

である.また

\begin{displaymath}
\mathrm{CD}=x,\ \mathrm{DE}=y
\end{displaymath}

とする.相似比より

\begin{displaymath}
\mathrm{DF}:\mathrm{CD}=\mathrm{AB}:\mathrm{AC}
\end{displaymath}

なので, $\mathrm{DF}=\dfrac{x\mathrm{AB}}{a'}$である.

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{CE'}}=
\overrightarrow{\mathrm{DE}}
\end{displaymath}

にとると

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{CE}}=
\overrightarrow{\mathrm{CD}}+
\overrightarrow{\mathrm{CE'}}
\end{displaymath}

なので,補題12より

\begin{displaymath}
1
=\dfrac{x^2}{{a'}^2}+\dfrac{y^2}{{b'}^2}
=\dfrac{\mathrm{DF}^2}{\mathrm{AB}^2}+\dfrac{\mathrm{DE}^2}{{b'}^2}
\end{displaymath}

$\mathrm{AB}=b'$なので

\begin{displaymath}
\mathrm{DF}^2+\mathrm{DE}^2=\mathrm{AB}^2
\end{displaymath}

である.双曲線の場合も同様である. □


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2014-01-03