next up previous
次: 方程式と恒等式 上: 複素数の構成 前: 複素数と直線

根号について

南海  先日も根号に関して掲示板質問があった. 次のどこが間違っているのか.

例 1.4.4  

$-1=1$」を証明するという次の論証の誤りを指摘せよ.

\begin{eqnarray*}
\sqrt{-1}&=&\sqrt{-1}\\
\sqrt{\dfrac{1}{-1}}&=&\sqrt{\dfrac{-...
...qrt{1}\cdot\sqrt{1}&=&\sqrt{-1}\cdot\sqrt{-1}\\
∴ \quad 1&=&-1
\end{eqnarray*}

史織  これは2行目から3行目への移行が言えません.つまり一般に

\begin{displaymath}
\sqrt{\dfrac{a}{b}}=\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}}
\end{displaymath}

$a,\ b$ が正の数のときしか使ってはいけないと習いました.

南海  その通りである.ではなぜ正の数のときしか使ってはいけないのだろうか. すこし考えておこう.一般に

\begin{displaymath}
\sqrt[n]{a}
\end{displaymath}

は何を表すのか.

史織  0でない任意の複素数 $a$ に対して

\begin{displaymath}
x^n=a
\end{displaymath}

の根root は全部で $n$ 個ある.そのうちのどれかですが….

南海  悪い悪い.質問は,どのように決めればよいか,ということだ. $a$ が実数のときとしよう.

史織  $a$ が正の実数なら $n$ 個の根のうち正の実数のもの,つまり

\begin{displaymath}
x^n=a
\end{displaymath}

の根で偏角が0のものを表す.そうでないときは….

$a$が負でも, $n$ が奇数なら,$x^n=a$の実数根は一つだから,それを表すのですね.

$a$が負で$n$が偶数なら$x^n=a$の実数根は2つあるからどれをとるかが難しい.

南海  $a=-b$ とする. $b>0$ である.このとき$\sqrt[n]{b}$は正実数のものに決まる. それに$\sqrt[n]{-1}$をかけることにすればよいのだが, $n\ge 4$ に対しては 複雜で記号としての意味がない.例えば $x^4=-1$ の4つの根は?

史織 

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{\sqrt{2}}(\pm 1\pm i)
\end{displaymath}

の4つですから$\sqrt[4]{-1}$をどれにするかは決められない.

南海  そこで $n=2$ のときは$\sqrt{-1}$として $i$ をとることに決めるのだ.

史織 


ですね.

したがって


ですね.

だから $\dfrac{1}{i}=-i$ なので無理に書けば

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{\sqrt{-1}}=-\sqrt{-1}
\end{displaymath}

です.

南海  まとめると $a,\ b$が正なら

\begin{displaymath}
\sqrt[n]{a}\sqrt[n]{b}=\sqrt[n]{ab}
\end{displaymath}

であるが,負が混じると成立しない.



Aozora Gakuen