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無限遠点,射影直線,射影平面

秀樹  軌跡の問題でまた除外点を見落とした.

拓生  どんな問題ですか.

秀樹  いちばんはっきりしている例でいうと, $t$ が実数全体を動くとき,

\begin{displaymath}
\mathrm{P}\left(\dfrac{1-t^2}{1+t^2},\ \dfrac{2t}{1+t^2}\right)
\end{displaymath}

で定まる点の軌跡を求める問題です.

$x^2+y^2=1$を満たすことはいろんなやり方でわかりますが,$(-1,\ 0)$だけにはなれず, 円からこの点を除外しなければならないのです.

$x$ 座標は $x=-1+\dfrac{2}{1+t^2}$と変形できるから,確かに$x=-1$にはなり得ないのだけれ ど何かわざとらしい変形で,よく見落とします.

南海  除外点とはどんな点なんだろう.

秀樹  どんな点といわれても除外されて無い点なんですが.

拓生  でも$(-1,\ 0)$って次のように$t \to \infty$のときの極限です.

\begin{eqnarray*}
\lim_{t \to \infty}\dfrac{1-t^2}{1+t^2}
&=&\lim_{t \to \inft...
...
&=&\lim_{t \to \infty}\dfrac{\dfrac{2}{t}}{\dfrac{1}{t^2}+1}=0
\end{eqnarray*}

だからこの除外点は $t$ が無限になるときです.

秀樹  無限の点なんてあるのかなあ.

南海  たとえば中学生に「二乗して負になる数は」と聞いたら「あるはずない」 というだろうけれど,複素数を習えばちゃんとあるわけだから,この場合も何かある可能性がある.

拓生  複素数のときは$i^2=-1$とはじめは無理に作ったようですが, 実際は複素数の方が自然で広い世界だった….

この場合も無限遠点を作ってしまえばいい. $t$ が実数 全体と無限遠点を動くとき, 軌跡は円全体になる….

秀樹  作るといってもそんな勝手にできるのだろうか.

南海  少なくとも数学的に式でとらえることができて,これまでの実数 と一体になったものでなければならない. 結局は,計算できるものとしてとらえることができたとき,現実にそれは存在するといえる.

拓生  どうするのでしょうか.

南海  それのヒントになることは,実はすでに君たちはよく知っているのだよ. あるやり方では「無限」の場合がとらえられないが,あるやり方では「無限」の場合を含めて 統一的にやれることがあっただろう.

秀樹  直線を$y=mx+n$と表せば, $y$ 軸に平行な$x=k$の型の直線は傾きが無限 のときになり,別に扱わなければならないが,直線を$ax+by+c=0$と表せば, $y$ 軸に平行な 場合を含めて一つの式で表せる.

拓生  直線を$ax+by+c=0$と三つの数の組 $(a,\ b,\ c)(ただし(a,\ b,\ c)\not=(0,\ 0,\ 0))$で表すと,

  1. $b \not= 0$ のときは$y=mx+n$型の直線を表し, $b=0$のときは$x=k$の型の直線を表す.
  2. $a:b:c=a':b':c'$なら $ax+by+c=0 ,\ \,a'x+b'y+c'=0$は同じ直線を表す.
ということですね.

南海  そう.

拓生  無限遠点をとらえるためには,$(0,\ 0)$でない 数の組$(t_0,\ t_1)$を考える. $t_0:t_1=x'_0:x'_1$なら$(t_0,\ t_1)$$(x'_0,\ x'_1)$は 同じ点を表すとする.すると,$t_0\not=0$なら$(t_0,\ t_1)$ $(1,\ \dfrac{t_1}{t_0})$は同 じ点だから,$t_0\not=0$である全体は $t= \dfrac{t_1}{t_0}$と対応させれば実数全体と一致 する.$t_0=0$の点は結局$(0,\ 1)$で定まる1点で,これが無限遠点です.

秀樹  軌跡の式とうまくあうかな. $t= \dfrac{t_1}{t_0}$を代入して 分母を整理すると,

\begin{displaymath}
\mathrm{P}\left(\dfrac{{t_0}^2-{t_1}^2}{{t_0}^2+{t_1}^2},\dfrac{2t_0t_1}{{t_0}^2+{t_1}^2}\right)
\end{displaymath}

となります.確かにこれは比が同じなら同じものを表している.そして$t_0=0$のとき は$(-1,\ 0)$になる !

南海  このやり方で実数全体と無限遠点をあわせたものを「射影直線」といいます.

秀樹  媒介変数$(t_0,\ t_1)$が射影直線の全体を動くとき, 軌跡が円全体になるのか.この方がずっとすっきりする.

拓生  でも直線上の点が二つの数の組$(t_0,\ t_1)$で表されるのなら, 平面上の点 $\mathrm{P}$も三つの数の組

\begin{displaymath}
\mathrm{P}\left({t_0}^2+{t_1}^2,\ {t_0}^2-{t_1}^2,\ 2t_0t_1\right)
\end{displaymath}

と考えた方が….

そうかこれが「射影平面」ですね,つまり$(0,\ 0,\ 0)$でない数の組 $(x_0,\ x_1,\ x_2)$ を考える. $x_0:x_1:x_2=x'_0:x'_1:x'_2$なら $(x_0,\ x_1,\ x_2)$ $(x'_0,\ x'_1,\ x'_2)$は 同じ点を表すとする.すると,$x_0\not=0$なら $(x_0,\ x_1,\ x_2)$ $\left(1,\ \dfrac{x_1}{x_0},\ \dfrac{x_2}{x_0}\right)$は同じ点だから,$x_0\not=0$で ある全体は普通の平面になる.$x_0=0$のときは $(0,\ x_1,\ x_2)$になる …,これは何だ, あっ,そうか射影直線になる.

この場合は無限遠直線ということですね.

秀樹  どのみち ${t_0}^2+{t_1}^2\not=0$だから同じことだと思うけど.

拓生  この場合はね.

秀樹  平行な二直線は無限遠点で交わるということになるのでしょうか.

拓生  やってみましょう.平行な二直線を

\begin{displaymath}
ax+by+c=0,\ ax+by+d=0\,(c \not=d)
\end{displaymath}

とする.

射影平面の座標を $(x_0,\ x_1,\ x_2)$とする.$x_0\not=0$のときは $\left(1,\ \dfrac{x_1}{x_0},\ \dfrac{x_2}{x_0}\right)$でこれが今までの平面になる.だから, 直線の式を射影平面の式にするために, $x=\dfrac{x_1}{x_0},\ y=\dfrac{x_2}{x_0}$を代入し て分母を払うと,

\begin{displaymath}
ax_1+bx_2+cx_0=0,\ ax_1+bx_2+dx_0=0
\end{displaymath}

になる.ここで,$x_0=0$とすると,$ax_1+bx_2=0$.これは$x_1:x_2=-b:a$ということだから この二直線は$(0,\ -b,\ a)$という無限遠点で交わるのです!

南海  話はつきないようであったが,射影平面が定義されたので, とりあえずもう一つの話をしなければならない.



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