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問題の発見

拓生  最近次の二つの問題をしました.

例 1.1.1       

2定点 $\mathrm{A}(0,a)$ , $\mathrm{B}(b,c)$ と, $x$ 軸上を動く点 $\mathrm{P}$ とがある. $a,b,c >0$ とする.


  1. \begin{displaymath}
\overline{\mathrm{AP}}^2+\overline{\mathrm{BP}}^2
\end{displaymath}

    が最小になるような点 $\mathrm{P}$ の座標を求めよ.

  2. \begin{displaymath}
\overline{\mathrm{AP}}+\overline{\mathrm{BP}}
\end{displaymath}

    が最小になるような点 $\mathrm{P}$ の座標を求めよ.

これは解けました.解答です.

解答

  1. $\mathrm{P}(t,\ 0)$ とおくと

    \begin{eqnarray*}
\overline{\mathrm{AP}}^2+\overline{\mathrm{BP}}^2 &=&a^2+t^2+...
...&=&2 \left(t- \dfrac{b}{2} \right)^2+a^2+\dfrac{b^2}{2}+c^2 \\
\end{eqnarray*}

    よって, $\overline{\mathrm{AP}}^2+\overline{\mathrm{BP}}^2$ が最小となるのは, $\displaystyle t= \frac{b}{2}$ のとき, つまり,

    \begin{displaymath}
\mathrm{P} \left( \frac{b}{2},\ 0 \right)
\end{displaymath}

    のときである.
  2. $x$ 軸に関する $\mathrm{B}$ の対称点を $(b,\ -c)$ とおく.

    $\mathrm{A}(0,a)$$(b,\ -c)$ を結ぶ直線は,

    \begin{displaymath}
y= \dfrac{-a-c}{b}x+a
\end{displaymath}

    となり, これと $x$ 軸とが交わる点が求める点である.

    $y=0$ とおいて, .よって


    求める点は, P .□

さらにもう一問です.

例 1.1.2       

頂点の座標が $\mathrm{A}(0,a)$ , $\mathrm{B}(a,\ 0)$ , $\mathrm{C}(-a,\ 0)$ である三角形 $\mathrm{ABC}$ がある.座標平面上の任意の点 $\mathrm{P}$ に対して,

\begin{displaymath}
\overline{\mathrm{PA}}^2+\overline{\mathrm{PB}}^2+\overline{\mathrm{PC}}^2 \ge \frac{8}{3}a^2
\end{displaymath}

が成り立つことを示せ.等号が成立するときの点 $\mathrm{P}$ の座標を求めよ.

問題そのものはできました.解答です.

解答     $\mathrm{P}(x,\ y)$ とおく.

\begin{eqnarray*}
\overline{\mathrm{PA}}^2+\overline{\mathrm{PB}}^2+\overline{\...
...\dfrac{a}{3} \right)^2+\dfrac{8}{3}a^2+3x^2 \ge \dfrac{8}{3}a^2
\end{eqnarray*}

等号成立は, $x=0,\ y= \dfrac{a}{3}$ , つまり $\mathrm{P}\left(0,\ \dfrac{a}{3} \right) $ のとき.□

2番の問題の最小値を与える点は, 三角形 $\mathrm{ABC}$ の重心で, 問題のような特別な点でなくても, 一般的に「3点への距離の二乗の和が最小になる点は重心です」.

南海  その通り. 一般に3点からの距離の和を最小にする点は, 3点を頂点とする三角形の重心です.

拓生  はい.これは結局, 二次関数の最小問題です.

南海  で, 何がわからんのか.

拓生  問題の1番と2番を見比べると, 三点からの 距離の和 を最小にする 点 $\mathrm{P}$ はどのような点なのか, 作図はできるのか, という問題が浮かびあがります.これは 解けるのでしょうか.

南海  そういうことか.与えられた問題が解けたことに満足せず, 問題の型を見比 べて新しい問題を見いだす, というのはすばらしいことだ.


\begin{displaymath}
\begin{array}{\vert c\vert c\vert}
\hline
\overline{\math...
...ne{\mathrm{PB}}+\overline{\mathrm{PC}} \\
\hline
\end{array}\end{displaymath}

この表の対比から問題を見つけたということだ.こういう問題の発見の仕方の基本を 「型(パターン)認識」といってな, 何か新しいことを考えつくときに大切なものだ.

だいたい教科書や問題集は解ける問題ばかり載せているが, そのすぐそばにこのようにして 問題を発見すれば, 難しい問題が潜んでいることが多いのだ.

三点からの距離の和が最小となる点を作図せよというわけだ.これは結構てごわい問題なんだ.

拓生  よく知られた問題ですか.

南海  この距離の和を最小にする点を「フェルマ点」と言ってな. つまりはあのフェルマ先生が研究したのだよ.



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