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凸多角形

南海  なるほど.数学IIIの二次導関数の応用で「上に凸」とか 「下に凸」とか習うわけだが,「凸」の意味からはっきりさせないと一般化は うまくできなかったわけだ.

ここで二つの多角形を見てほしい.

 

結論からいうと図1は凸でない5角形だ.それに対して図2は凸な多角形だ.この違いを どのように定義するのか.

拓也 図を見せてもらったので気づきましたが,凸な方は内部の任意の2点を 結ぶ線分がまた内部にあるが,凸でないと,線分が外に飛び出すことがある.

南海 その通り.ここに「凸」をはっきりさせるカギがある.

以下で「多角形」とは,内部と周からなる $xy$ 平面上の点の集合のこととする.

平面上の $n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$が「凸多角形」であるとは,この多角形の 任意の2点を結ぶ線分がつねにこの多角形に含まれることをいう.

もちろん,この定義は凸多角形だけではなく,一般に「凸領域」の定義に拡張されるが, 今はそこまではいいだろう.

この概念をつかうと次の事実が成り立つ.

定理 5
     $n\ge 3$ の自然数 $n$ に対し,$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$が,凸多角形であるための 必要十分条件は

\begin{displaymath}
0<r_1,\ r_2,\ \cdots,\ r_n \quad かつ \quad r_1+r_2+\cdots+r_n=1
\end{displaymath}

である任意の実数 $n$ 個の組に対して,$\mathrm{O}$ を平面上の基準点とし,

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\sum_{k=1}^n r_k\overrightarrow{\mathrm{OA_k}}
\end{displaymath}

で点 $\mathrm{P}$ を定めると, $\mathrm{P}$ がつねにこの多角形の点になる
ことである.

証明

必要条件を数学的帰納法で証明する.

  1. $n=3$ のとき.

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
=r_1\overrightarrow{\mathrm{O...
...rightarrow{\mathrm{OA_2}}
+r_3\overrightarrow{\mathrm{OA_3}}
\end{displaymath}

    $r_3=1-r_1-r_2$ より,

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}-\overrightarrow{\mathrm{OA_3}}...
...overrightarrow{\mathrm{OA_2}}-\overrightarrow{\mathrm{OA_3}})
\end{displaymath}

    \begin{eqnarray*}
∴ \quad \overrightarrow{\mathrm{A_3P}}&=&r_1\overrightarrow{...
... + \dfrac{r_2}{r_1+r_2}\overrightarrow{\mathrm{A_3A_2}}\right\}
\end{eqnarray*}

    $r_3>0$ より $r_1+r_2<1$ であるから $\mathrm{P}$ $\bigtriangleup \mathrm{A_1A_2A_3}$ の内部にある.
  2. $n$個 のとき成立するとして, $n+1$個 のときの成立を示す.

    まず, $n+1$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_{n+1}}$が凸多角形なら $n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$も凸多角形である.なぜなら点 $\mathrm{P}$$\mathrm{Q}$$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$の点とすると,$n+1$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_{n+1}}$が凸多角形なので,線分 $\mathrm{PQ}$$n+1$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_{n+1}}$に含まれる.ところが$\mathrm{P}$$\mathrm{Q}$ も直線 $\mathrm{A_1A_{n+1}}$ に関して同じ側にあるので,線分 $\mathrm{PQ}$ も 直線 $\mathrm{A_1A_{n+1}}$ に関して同じ側にあり,したがって線分 $\mathrm{PQ}$$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$に含まれるからである.

    ここで,実数 $r_1,\ r_2,\ \cdots,\ r_{n+1}$

    \begin{displaymath}
k=1,\ 2,\ \cdots ,\ n+1\ \ に対して\ \ r_k>0,\ で\ \ \sum_{k=1}^{n+1}r_k=1
\end{displaymath}

    を満たすとする.また $\displaystyle r=\sum_{k=1}^nr_k$ とおく. $r+r_{n+1}=1$ である

    \begin{eqnarray*}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}&=&\sum_{k=1}^{n+1} r_k\overright...
...athrm{OA_k}}\right)
+r_{n+1}\overrightarrow{\mathrm{OA_{n+1}}}
\end{eqnarray*}

    $\displaystyle \sum_{k=1}^n\dfrac{r_k}{r}=1$ なので帰納法の仮定から

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OQ}}=\sum_{k=1}^n\dfrac{r_k}{r}\overrightarrow{\mathrm{OA_k}}
\end{displaymath}

    でさだまる点 $\mathrm{Q}$$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$の点である.そして

    \begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}=r\overrightarrow{\mathrm{OQ}}+r_{n+1}
\overrightarrow{\mathrm{OA_{n+1}}},\ r+r_{n+1}=1
\end{displaymath}

    であるから, $\mathrm{P}$$n+1$ 角形の頂点 $\mathrm{A}_{n+1}$と内部の点を結ぶ 線分上にあり $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_{n+1}}$の点である.

十分条件であることを示す.

$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$の2点 $\mathrm{P}$$\mathrm{Q}$ と 実数 $t,\ 0<t<1$ に対して

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OR}}=(1-t)\overrightarrow{\mathrm{OP}}+t\overrightarrow{\mathrm{OQ}}
\end{displaymath}

が再び $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$の点であることを示す.
$\mathrm{P}$ $\bigtriangleup \mathrm{A_iA_jA_k}$ の点であり, $\mathrm{Q}$ $\bigtriangleup \mathrm{A_lA_mA_n}$ の点であるとする.つまり


とおける.このとき $\mathrm{PQ}$$t:1-t$ の内分点を $\mathrm{R}$ とする.


であるが

\begin{displaymath}
(1-t)(p+q+r)+t(s+t+u)=1
\end{displaymath}

なので,条件から $\mathrm{R}$$n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$の点である. よって $n$ 角形 $\mathrm{A_1A_2 \cdots A_n}$は凸多角形である.□

拓也 なるほど.これで気づいたのですが,三角形はつねに「凸」なのですね.

南海 そうなのだ.4角形からはつねに凸というわけではない.


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