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線型写像の行列表現

南海  ベクトル空間$V$と一組の基底

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf e}_n
\end{displaymath}

をとり, $V$から$V$への線型写像$f$を考える. $V$から他のベクトル空間でもよいが,結局は$V$から$V$への場合を考えれば, 他の場合は処理できるので,ここでは過度な一般化は避け, $V$から$V$への線型写像を考えよう.

$V$のベクトル $\mathrm{\bf u}$を実数 $x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n$を用いて

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\sum_{k=1}^nx_k\mathrm{\bf e}_k
\end{displaymath}

と表す.

\begin{displaymath}
f(\mathrm{\bf u})=
f\left(\sum_{k=1}^nx_k\mathrm{\bf e}_k \right)
=\sum_{k=1}^nx_kf(\mathrm{\bf e}_k)
\end{displaymath}

である.よって $k=1,\ 2,\ 3,\ \cdots,\ n$について $f(\mathrm{\bf e}_k)$がわかれば, $f(\mathrm{\bf u})$が決まる.

\begin{eqnarray*}
f(\mathrm{\bf e}_1)&=&
a_{11}\mathrm{\bf e}_1+a_{21}\mathrm{\b...
...rm{\bf e}_1+a_{2n}\mathrm{\bf e}_2+\cdots+a_{nn}\mathrm{\bf e}_n
\end{eqnarray*}

とおく.

耕一  係数のつきかたが行列の成分の並び方と逆ですね.

南海  そうだ.こうすることで以下に見るように統一的に扱える. まず,

\begin{eqnarray*}
f(\mathrm{\bf u})&=&\sum_{k=1}^nx_kf(\mathrm{\bf e}_k)
=\sum_{...
...\sum_{j=1}^n\left(\sum_{k=1}^na_{jk}x_k\right) \mathrm{\bf e}_j
\end{eqnarray*}

となる.ここで,

\begin{eqnarray*}
y_1&=&a_{11}x_1+a_{12}x_2+\cdots a_{1n}x_n\\
y_2&=&a_{21}x_1+...
...2n}x_n\\
&&\cdots\\
y_n&=&a_{n1}x_1+a_{n2}x_2+\cdots a_{nn}x_n
\end{eqnarray*}

とおく.すると,

\begin{displaymath}
f(\mathrm{\bf u})=\sum_{j=1}^n y_j\mathrm{\bf e}_j
\end{displaymath}

となる.この $x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_n$ $y_1,\ y_2,\ \cdots,\ y_n$ の関係を高校数学Cの行列の積の記法で書けば,

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
y_1\\
y_2\\
\cdots\\
\cdots\...
... x_1\\
x_2\\
\cdots\\
\cdots\\
x_n
\end{array}\right)
\end{displaymath}

となる.

耕一  写像$f$による基底の行き先を元の基底を用いて表す行列の係数を, $a_{11}$から$a_{nn}$への対角線に関して対称に入れ替えた行列が, 通常の行列による一次変換の記法に一致するのですね.

南海  そうだ.

耕一  高校数学Cで成分で書かれたベクトルと行列によって, 一次変換が定まると習いました. 実は逆で, 線型写像に対して基底をひとつ固定することで,行列が定まるのですね.

南海  ここで,基底の像と行列の関係を見やすくするために次のように考えよう. 基底を一組固定し,それを

\begin{displaymath}
\left(
\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathrm{\bf e}_n
\right)
\end{displaymath}

のように書く. この基底で表されるベクトル

\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\sum_{k=1}^nx_k\mathrm{\bf e}_k
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
\mathrm{\bf u}=\left(
\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ ...
... x_1\\
x_2\\
\cdots\\
\cdots\\
x_n
\end{array}\right)
\end{displaymath}

と表すことにする.

耕一  内積の計算と同じようにかけて和をとるのですね.

南海  これを用いると,これらの基底の$f$による像は

\begin{displaymath}
\left\{
f(\mathrm{\bf e}_1),\ f(\mathrm{\bf e}_2),\ \cdots,\...
...ots\\
a_{n1}&a_{n2}&\cdots&\cdots&a_{nn}
\end{array}\right)
\end{displaymath}

と表せる.このとき

\begin{eqnarray*}
f\left(\mathrm{\bf u}\right)
&=&\left\{
f(\mathrm{\bf e}_1),\ ...
...}
x_1\\
x_2\\
\cdots\\
\cdots\\
x_n
\end{array}\right)
\end{eqnarray*}

となる.これが

\begin{displaymath}
\left(
\mathrm{\bf e}_1,\ \mathrm{\bf e}_2,\ \cdots,\ \mathr...
... y_1\\
y_2\\
\cdots\\
\cdots\\
y_n
\end{array}\right)
\end{displaymath}

となるのだから,

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
y_1\\
y_2\\
\cdots\\
\cdots\...
... x_1\\
x_2\\
\cdots\\
\cdots\\
x_n
\end{array}\right)
\end{displaymath}

となるのだ.



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