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間接証明と背理法

間接証明

間接証明というのは広い概念である. 命題$P$が成立することを示すのに, 直接$P$の成立を示すのではなく, 「このような理由で$P$が成立する以外にありえない」 ということを示すのである. 多くの場合,根拠になっているのは排中律,つまり命題$A$か その否定$\overline{A}$のいずれか一方がつねに成立し, $A$でもなければ$\overline{A}$でもないという第三の場合はない, ということである.

代表的な間接証明は対偶証明と背理法である.

対偶証明

命題:「 $P$ ならば $Q$ である」の真偽と, その対偶命題:「 $Q$ でなければ $P$ でない」の真偽は一致する. したっがて[ $P$ ならば $Q$ ]を証明するためには [$Q$ でなければ $P$ でない]を証明すればよい. 対偶が成立することを示すことで,もとの命題が成立することを示す証明は, 直接に[ $P$ ならば $Q$ ]を証明するのではないから間接証明の一つである.

背理法

この対偶を用いた証明法の応用として背理法がある. 「$Q$ でないと仮定する.すると前提条件 $A$と矛盾が起こる.したがって $Q$が成立する.」 このような証明法を 背理法という.

しかし背理法は「対偶による証明」より応用が広い. $Q$ を示したい,しかし明示的には $A$ が書かれていない. このようなときにも$A$ を適切にとって何らかの矛盾に持ち込めばいいからだ.

その他の間接証明

対象$X$が条件$A$を満たし,対象$Y$も条件$A$を満たす. かつ条件$A$を満たすものはただ一つに定まる. ゆえに$X=Y$である.

これも$X=Y$を直接に示すのではないので, 間接証明である.

その他,「存在の証明」で扱う「鳩の巣原理」$n+1$ 個以上のボールのそれぞれが$n$個の箱のいずれかに入っている.2個以上のボールが入っているはこが存在する.」

あるいは数学的帰納法も間接証明であるし, ある命題 $P\Rightarrow Q$が偽であることを示すのに,反例:$P$であって$Q$ではない例をあげるのも間接証明である.



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