静岡大解説   問題に戻る  2000年入試に戻る


この問題の基本は連立漸化式と3項間漸化式の同値性にかんする理論である.
静岡大の問題は,3項間漸化式を解くことで行列のn 乗を求めようとしているのだが,大切なことは,同値性だ.

 この定理が次のように連立漸化式と3項間漸化式を結びつける.

連立漸化式と3項間漸化式と2次行列

数列 $\{ x_n \}$$\{ y_n \}$ の連立漸化式

\begin{displaymath}\left\{
\begin{array}{l}
x_{n+1}=a x_n+by_n\\
y_{n+1}=c x_n+dy_n
\end{array}\right. \quad \cdots \maru{2}
\end{displaymath}

を考えよう.行列 $A=\matrix{ a}{b}{c}{d}$ を考えるとこの連立漸化式は

\begin{displaymath}\vecarray{x_{n+1}}{y_{n+1}}=A\vecarray{x_n}{y_n}
\end{displaymath}

となる.したがって,等比数列と同様に

\begin{displaymath}\vecarray{x_n}{y_n}=A^n\vecarray{x_0}{y_0}
\end{displaymath}

となる.だから An が求まれば,数列 $\{ x_n \}$$\{ y_n \}$ の一般項が求まる.
 ハミルトン・ケイレイの定理より,

A 2-(a+d)A + (ad-bc)E = 0

つまり

\begin{displaymath}A^{n+2}-(a+d)A^{n+1}+(ad-bc)A^n=0 \quad \cdots \maru{3}
\end{displaymath}

である.

 これから A n を求める過程は,三項間漸化式を解くのとまったく変わらない.

 これからまた

\begin{eqnarray*}&&A^{n+2}\vecarray{x_0}{y_0}-(a+d)A^{n+1}\vecarray{x_0}{y_0}+(a...
...ray{x_{n+1}}{y_{n+1}}+(ad-bc)\vecarray{x_n}{y_n}=\vecarray{0}{0}
\end{eqnarray*}

である. つまり,数列 $\{ x_n \}$$\{ y_n \}$ はともに同じ3項間漸化式を満たす.

\begin{displaymath}\left\{
\begin{array}{l}
x_{n+2}-(a+d)x_{n+1}+(ad-bc)x_n=0\...
...y_{n+1}+(ad-bc)y_n=0
\end{array}\right. \quad \cdots \maru{4}
\end{displaymath}
 A n を求めることと,この3項間漸化を解くのが同値である.

 

 なお, これらの3項間の関係式から一般項を求めることは通常の解き方で解けるが,もう少し簡便にもできる.

 つまり

このとき

となる.ここでも用いられたのはケイレイハミルトンの定理である.

である.

$t^2-(a+d)t+(ad-bc)=(t-\alpha)(t-\beta)$ とおいて pnt + qn を求め,これまでの3項間漸化式の解き方で解いたものと比較しておいてほしい.