各ボールはいずれかの箱に入り,さらにどの箱に入る確率も等しい.
$ n $ 個のボールは区別しない.
箱と入れる順序のみ区別する.
したがって,どの箱にも1個以下のボールしか入っていない事象の確率は, $ n $ 個のボールを,順にそれまでにボールの入っている箱以外の箱にいれる事象の確率と等しい. その確率 $ p_n $ は \[ p_n=1\cdot\dfrac{2n-1}{2n}\cdot\dfrac{2n-2}{2n}\cdot\cdots\cdot\dfrac{2n-(n-1)}{2n} \] である. よって \[ \dfrac{\log p_n}{n} =\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^{n-1}\log\dfrac{2n-k}{2n} =\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^{n-1}\log\left(1-\dfrac{k}{2n} \right) \] したがって \[ \lim_{n \to \infty}\dfrac{\log p_n}{n}= \int_0^1\log\left(1-\dfrac{x}{2} \right)\,dx \] $ t=1-\dfrac{x}{2} $ と置換して計算する. \begin{eqnarray*} \int_0^1\log\left(1-\dfrac{x}{2} \right)\,dx&=& \int_1^{\frac{1}{2}}\log t\,(-2dt) =2\int_{\frac{1}{2}}^1\log t\,dt\\ &=&2\biggl[t\log t-t\biggr]_{\frac{1}{2}}^1 =2\left(-1-\dfrac{1}{2}\log\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2} \right)=\log 2-1 \end{eqnarray*} よって, \[ \lim_{n \to \infty}\dfrac{\log p_n}{n}=\log 2-1 \] である.
注1 $ p_n $ は次のように考えてもよい. $ n $ 個のボールを順に何れかの箱にい入れる入れ方の総数は $ (2n)^n $ 通り. そのうち,順にそれまでにボールの入っている箱以外の箱にいれる入れ方の総数は \[ 2n\cdot(2n-1)\cdot \cdots \cdot (n+1) \] 通りある.よって, \[ p_n=\dfrac{2n\cdot(2n-1)\cdot \cdots \cdot (n+1)}{(2n)^n} \]
注2 次の考え方はどこがまちがっているのかと質問があった.
$ 2n $ 個の箱に $ n $個のボールを入れる入れ方は $ {}_{2n} \mathrm{H}_n $ 通りある.
そのうち,どの箱にも1個以下のボールしか入っていないのは, $ {}_{2n} \mathrm{C}_n $ 通りある.
よって,
\[
p_n=\dfrac{{}_{2n} \mathrm{C}_n}{{}_{2n} \mathrm{H}_n}
\]
$ {}_{2n} \mathrm{H}_n $ は,結果としてどの箱にどれだけ入っているかの場合の数であるが,
各ボールをどの箱に入れるかが同様に確かであるという条件の下では,
それぞれが同様に確かであるとはいえない.
$ n=2 $ のとき.1回目と2回目にボールを入れる箱を●で示すと,
$ 4^2=16 $ 通りの中で次の3通りは区別されていて,いずれも同様に確かである.
\[
@
\begin{array}{l}
●◯◯◯\\
◯◯●◯
\end{array}
,\quad
A
\begin{array}{l}
◯◯●◯\\
●◯◯◯
\end{array}
,\quad
B
\begin{array}{l}
●◯◯◯\\
●◯◯◯
\end{array}
\]
ところが, $ {}_4\mathrm{H}_2={}_5 \mathrm{C}_2=10 $ 通りの中では,
@とAは区別されない.従ってこのなかでは,
1と3の箱に入る事象の確率は,1の箱に2個入る事象の確率の2倍であり,
$ {}_4\mathrm{H}_2 $ 通りのそれぞれは同様に確かではない.