2020年入試問題研究に戻る京大特色2番解答
(1) 1回目の試行で $ \mathrm{B} $ に来たときの,3回の試行でのコマの動きは次のようになる.
1回目の試行で $ \mathrm{C} $ に来たときは, $ \mathrm{B} $ と $ \mathrm{C} $ をすべて入れかえたものになる.
よって,2回の試行でのコマが頂点 $ \mathrm{A} $ に来る確率 $ p_2 $ は \[ p_2=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{2}{3}+\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{2}{3}=\dfrac{2}{3} \] 3回の試行でのコマが頂点 $ \mathrm{A} $ に来る確率 $ p_3 $ は \[ p_3=\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{3}=\dfrac{1}{9} \] である.(2) 試行の条件から, $ n $ 回目と $ n+1 $ 回目の同じ頂点に留まるのは, $ n-1 $ 回目もそこにあるときにかぎる.こうして, $ n-2,\ \cdots $ がすべて同じ頂点にあるときにかぎるが, (1)より, $ n\leqq 3 $ では留まることはない. これより,数学的帰納法によってコマが1回の試行で同じ頂点に留まることはない.
$ n+1 $ 回の試行の後,コマが $ \mathrm{A} $ にあるのは,次の2つの場合である.
1. $ n-1 $ 回目にコマが $ \mathrm{A} $ にあり, $ n $ 回目には $ \mathrm{B , C} $ にあって, $ \mathrm{A} $ に移動する. この確率は \[ \dfrac{2}{3}p_{n-1} \] である.
2. $ n-1 $ 回目, $ n $ 回目にコマが $ \mathrm{A} $ になく, $ n+1 $ 回目に $ \mathrm{A} $ に移動する.
$ n-1 $ 回目, $ n $ 回目ともコマが $ \mathrm{A} $ にあることはないので, $ p_{n-1}+p_n $ は $ n-1 $ または $ n $ 回目にコマが $ \mathrm{A} $ にある確率である. したがって, $ n-1 $ 回目, $ n $ 回目にコマが $ \mathrm{A} $ にない確率は \[ 1-p_{n-1}-p_n \] である. この場合から $ \mathrm{A} $ に移動するのは3の倍数が出るときなので,その確率は \[ \dfrac{1}{3}\left(1-p_{n-1}-p_n \right) \] である.よって, \begin{eqnarray*} p_{n+1}&=&\dfrac{2}{3}p_{n-1}+\dfrac{1}{3}\left(1-p_{n-1}-p_n \right)\\ &=&-\dfrac{1}{3}p_n+\dfrac{1}{3}p_{n-1}+\dfrac{1}{3} \end{eqnarray*} となる.また $ p_0=1 $ である.(3) (2)から \[ p_{n+1}-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{3}\left(p_n-\dfrac{1}{3} \right)-\dfrac{1}{3}\left(p_{n-1}-\dfrac{1}{3} \right)=0 \] $ q_n=p_n-\dfrac{1}{3} $ とおき, $ q_n $ の漸化式を \[ q_{n+1}-(\alpha+\beta)q_n+\alpha\beta q_{n-1}=0 \] とおくと, $ \alpha+\beta=-\dfrac{1}{3} $ , $ \alpha\beta=-\dfrac{1}{3} $ である.これより $ \alpha $ , $ \beta $ は2次方程式 \[ t^2+\dfrac{1}{3}t-\dfrac{1}{3}=0 \] の2解なので, \[ \alpha,\ \beta=\dfrac{-1\pm\sqrt{13}}{6} \] である.これを用いると漸化式は \[ \begin{array}{l} q_{n+1}-\alpha q_n=\beta\left(q_n-\alpha q_{n-1} \right)\\ q_{n+1}-\beta q_n=\alpha\left(q_n-\beta q_{n-1} \right) \end{array} \] となる.これから \[ \begin{array}{l} q_{n+1}-\alpha q_n=\beta^n\left(q_1-\alpha q_0 \right)\\ q_{n+1}-\beta q_n=\alpha^n\left(q_1-\beta q_0\right) \end{array} \] よって, \[ (\beta-\alpha)q_n=\beta^n\left(q_1-\alpha q_0 \right)-\alpha^n\left(q_1-\beta q_0\right) \] $ |\alpha|< 1,\ |\beta|< 1 $ であるから, \[ \lim_{n\to \infty}q_n=\lim_{n\to \infty}\left(p_n-\dfrac{1}{3} \right)=0 \] となる.つまり, \[ \lim_{n\to \infty}p_n=\dfrac{1}{3} \] である.