1.解説
簡単に整式について振り返っておこう.
単項式とは,
数と,0 または正の指数をもつ文字をかけあわせたものである.
数の部分を係数という.
多項式とは単項式を和によって結合したものである.
整式とは単項式と多項式の総称である.多項式を整式の意味に用いることもある.
文字が x の場合
のように記す.
整式であるかどうかは係数の問題ではない.
も整式である.
係数が整数であるものを整式というと誤解している人がいるがそれはまちがい.
や
等が整式でない.それぞれ,無理式,有理式,という.
式の問題を解く基本は次の2つの事実である.
(1) 除法の原理と因数定理,剰余定理
整式は整数の場合と同様,商が定義され,任意の整式
に対し次のことが成り立つ.
となる整式 q(x),r(x) がただ1組,存在する.
これを除法の原理といい,
q(x),r(x) をそれぞれ f(x) を g(x) で割った商,余りという.
除法の原理は整数で成り立つ.整数の除法の原理を用いて示されるさまざまの性質は
基本的に整式でも成り立つ.
除法の等式において g(x) を
とする. g(x) の次数が1であるから,
余りは0次,つまり定数となり,除法の式が次の形となる.
これから次の2つの定理が導かれる.
剰余定理
なぜなら1に
を代入すると
だからである.
因数定理
因数分解された因子を因数という.このとき次のことが成り立つ.
なぜなら
だからである.
は虚数でもかまわないことに注意しよう.
(2) 整式の一致と恒等式の定義
が x についての整式であるとき, 次の3つの命題は同値である.
また, このとき, 等式 A=B は 恒等式 であるという.
-
- 1.
任意の x の値に対して
は同一の値をとる.
- 2.
等式 A(x)=B(x) が異なる n+1 個の x の値に対して成り立つ.
- 3.
A(x) と B(x) は同一の式である. つまり, 次数が等しくかつ同じ次数の項の係数が等しい.
証明
-
- 1.
- 2.
は n 次以下の整式である.
の相異なる ai に対して, H(ai)=0 であるから, 因数定理より,
と因数分解される. もし
なら,
左辺の次数は n 以下であり, 右辺の次数は n+1 以上となる. よって, 矛盾が起こる.
したがって, H(x)=0 . つまり, A(x)=B(x) である.
- 3.
3つの条件は互いに他の2つの必要十分条件になっていることが示されているので, 題意が示された.
証明終わり
これは, きわめて重要な定理である. たとえば, f(x) が整式で
xf(x)=x3+2x2
が成り立っているとする. すると
f(x)=x2+2x
と結論される. このとき「 x=0 のとき割ってもよいのか」と質問する人がいる. どのように答えるのか.
のときは, つねに
f(x)=x2+2x
が成り立つ. したがって, 整式の一致の原理によってすべての x で
f(x)=x2+2x
が成り立つのである.
このように明確に説明しなければならない.
2.解答
1.[81年阪大理系]
題意から
とおける.ここに Q(x) は x の整式である.
とし@で x に
を代入する.
なので
である.つまり
ここで x に a を代入することにより
これがすべての a で成立する.したがって
は x の恒等式である.
f(x) を n 次式として
とおくと,
A式は次のことを意味する.
係数比較が出来て
ところが j が3の倍数でなければ,
である.
つまり j が3の倍数でなければ cj=0 .
したがって f(x) は3の倍数次の項以外は係数が0となり, x3 の多項式になることがわかる.
つまり題意が示された.
2.[91京大後期理系]
-
- 1.
に y=0 を代入すると,
f(x)=P0(x)
が得られる.また,を y で微分すると
となり,この式に y=0 を代入すると
f'(x)=P1(x)
が得られる.さらに y で微分すると
となるので,同様にして
が得られる.
次に,f(x+y) は x と y の次数の合計が常に n であり,よって Pn(x) は定数である.
で x=0 を代入すると
となる.つまり f(x) の最高次数の係数が Pn(x) であることを示している.
- 2.
f(x) の次数が
と仮定する.
一方,の y を cy に置き換えると,
より係数を比較すると,
より
であるから,
また,
より,
がわかり,これから 2n-1=n が結論される.
ところが
より
となりこの結論と矛盾する.
したがって
が否定され,
であることが示された.
3.[東大92年後期理系]
4.[阪大98年前期理系]
解1
より,
nf'(x)=f'(x)+(x+p)f''(x)
よって,
同様に,
よって,からnをすべてかけあわせると
n!f(x)=(x+p)nfn(x)
ここで,
fn(x)=n!a0 なので
f(x)=a0(x+p)n
解2
であるから,
のとき, xn-k の係数は,
nf(x) と比較して,
と仮定すると, 上式より,
また,
よって,
解3
条件式は
では関数等式
と一致する.
両辺を x で積分する.
より
この関係は,実数の定数 C' を用いて
f(x)=C'(x+p)n
と表される.
多項式の関係式がで成立するのでx=-pのときも成立する.
条件式の最高次数の係数と比較して C'=a0
5.[98京都府立医科大]
6.[99京都府立医科大]
-
- 1.
一般に関数 y=f(x) のグラフを x=a で対称に変換したグラフの関数は y=f(2a-x) である.
とする.
f(x) は
で定義され
より, y=f(x) は
に関して対称である. よって, 条件をみたしている.
- 2.
題意より
が成り立つ.ところが, このとき任意の実数 x0 に対し
f(x0)=f(2a-x0)=f(2b-(2a-x0))=f(2b-2a+x0)
が成り立つ.したがって
となる. a<b より, これは
をみたす x の値が無数にあることを意味する.
f(x) が整式であるから, 1は恒等式である. つまり, f(x) は定数である.
7.[99京都府立医科大]
よって,
f(-x)=f(x) が
の区間の無数の x の値で成立する.
したがって,すべての x に対しつねに
f(-x)=f(x) , つまり f(x) は偶関数である.
次に
なので
よって, 上と同様の理由で g(x) は偶関数である.
とすれば
f(x)=f(-x) より
.
よって,
x の整式 F(x) を用いて
f(x)=F(x2) , 同様に, xの整式 G(x)
を用いて
g(x)=G(x2) とおける.
より
よって,恒等式として
F(x2)=G(1-x2)
つまり
F(x)=G(1-x) である.
明らかに G(1-x) と G(x) の次数は等しいので F(x) と G(x) の次数が等しい.
したがって f(x) と g(x) の次数も等しい.
8.[00東大後期理系]
9.[00お茶の水女子大後期]
解1
f(x) を
次,
を m 次とし
とおく.
条件は f(x) と g(y) で対称なので
とする.
のとき条件は
となる.
のなかでこの順に見て最初に0でない係数を bm-j とする.上の条件は
これから n+j=m であるが
より
ならn+j>mで不可.
つまり anbn=1 .整数係数なので
で
g(y)=bnyn .
このとき より
なので
.
ゆえに
解2
『別解研究』「整式の整数論」「06京大00お茶大」 の最終部分
10.[01京都府立医科大]