いろんな場で高校生に数学を教えていると,教える各内容の根拠をつかんでいることと,高校数学の方法論をもっていることが必要で,それがなければ,教えることを全うできないことを痛感した.それで,同じ思いをもつ教員や,自分で学ぼうという高校生,大学生の勉強の一助にと,みずから勉強したことを公開してきた.
青空学園数学科はまた,広く社会人に開かれた草の根数学の広場をめざしてきた.2000年5月になって『解析概論』の読書会をはじめた.数学をもう一度勉強したいと思いながらその条件がなく,そのままになっている人は少なくないはずだ.そんな人と読書の輪ができればと考え,同時配信メールを活用する読書会を企画した.数学関係の掲示板などで呼びかけ,10人も集まればはじめようと考えていたが,予想を超える400人以上の人が登録し,互いに教えあいながら『解析概論』を読み切り,すべての演習問題を解いた.その報告は文献([3])にある.その後もいくつかの数学書の読書会をおこなった.これもまた大きな経験であった.
学校やその他の教育関係の場,そしてウエブサイトなどはすべて,生徒と教員,人と人の出会う場である.せめて出会った生徒には,学問としての数学を伝えたい.数学を通してわかる喜びを伝えたいし,根拠を問う批判精神を育んでほしいと願ってきた.そうして共有される生き方,考え方が数学にかかわる文化である.
実践先行で来たので,理論化できていないし,すべての資料にあたれたわけでもないが,これらの経験を踏まえて,教育数学の一側面としての高等教育における数学の規格について,高校での数学は本来どうあるべきか,そして大学初年級における数学に何が求められるのかという観点から報告したい.