しかし,これもまた,事象の独立を経てはじめてその意味が明確になることなのである. それは,別個の試行で定まる確率空間の積ということである.
100円硬貨と10円硬貨を投げる試行を考える. われわれはすでに,100円硬貨を投げる試行の標本空間は,要素は2個,表と裏. 10円硬貨を投げる試行の標本空間も,要素は2個,表と裏. それを軸と軸にとるようにの組で考えた.
2つの集合の要素の組の全体の集合を,それらの集合の積という. これをもとにすれば,確率空間の積が考えられ,そこではじめてそれぞれの試行が独立であることをとらえることができる. それを考えてみよう.
2つの確率空間とがあり, とはそれぞれとの事象だけで定まり, たがいにとの事象とは無関係であるとする. つまり,のが起こったとき, ではその何れもが,で定まる確率で起こりうる, ,でも同様ということである.
とはそれぞれとの事象だけで定まり, たがいにとの事象とは無関係であるとの仮定が, 埋め込みができることと同値である.
任意のの事象との事象に対して, このようにして埋め込まれたの事象とは互いに独立である.
証明
これによって
の根元事象の確率が相等しく,の根元事象の確率も相等しく, かつ,2つの標本空間との積集合に,事象やが,の形で埋め込めることができるとする.
それぞれの事象の,での確率は,
,
である.
そして,
よって標本空間での事象の確率は
逆にいうと,先のの確率の定義は自然なものである.
標本空間2個の積は,個の積にそのまま一般化される.