next up previous 次: 平方剰余の相互法則 上: 平方剰余 前: 平方剰余とルジャンドルの記号

整数を平方数の和に分解すること

平方剰余の応用として次の有名な定理を証明しよう.

定理 32
     すべての正の整数 $n$

\begin{displaymath}
n={x_1}^2+{x_2}^2+{x_3}^2+{x_4}^2\quad (0 \le x_1,\ x_2,\ x_3,\ x_4)
\end{displaymath}

と,0を許した四つの平方数の和として表すことができる. ■

証明    次の恒等式

    $\displaystyle ({x_1}^2+{x_2}^2+{x_3}^2+{x_4}^2)({y_1}^2+{y_2}^2+{y_3}^2+{y_4}^2)$ (3.2)
  = $\displaystyle (x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3+x_4y_4)^2
+(x_1y_2-x_2y_1+x_3y_4-x_4y_3)^2$  
      $\displaystyle \quad +(x_1y_3-x_2y_4-x_3y_1+x_4y_2)^2
+(x_1y_4+x_2y_3-x_3y_2-x_4y_1)^2$ (3.3)

によって,四つの平方数の和の積は,再び四つの平方数の和である. 従って $n$ が素数 $p$ の場合に証明すれば十分である.

$n=2$なら $2=1^2+1^2$ で成立する.

$n=p>2$ とする. $-1$$p$ の平方剰余なら

\begin{displaymath}
x^2+1=ph
\end{displaymath}

とおく.

$-1$つまり $p-1$$p$ の平方非剰余なら $1,\ 2,\ \cdots,\ p-1$$p$ の平方剰余 $1$ から始まって非剰余 $p-1$ に終わる系列なので,そのなかには $k$ は平方剰余で あるが, $k+1$ は非剰余であるような $k$ が必ずある.ところがこのとき

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{-k-1}{p} \right)=\left(\dfrac{-1}{p} \right)\left(\dfrac{k+1}{p} \right)
=(-1)\cdot (-1)=1
\end{displaymath}

であるから

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
{x_1}^2=k &\quad (\bmod.\ p),\\
{x_2}^2=-k-1&\quad (\bmod.\ p),
\end{array}
\end{displaymath}

となる $x_1,\ x_2$ がある.これは

\begin{displaymath}
{x_1}^2+{x_2}^2+1\equiv 0\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
{x_1}^2+{x_2}^2+1=ph
\end{displaymath}

とおける.

従って一般に素数 $p$ に対して

\begin{displaymath}
{x_1}^2+{x_2}^2+{x_3}^2+{x_4}^2=ph
\end{displaymath} (3.4)

となる $x_1,\ x_2,\ x_3,\ x_4$$h$ が存在する. あえて$x_4$ までとらなければならないのは,後の証明で恒等式 (3.3) を使うからである.

ここで $h>1$ なら $x_1,\ x_2,\ x_3,\ x_4$ を適当な $x'_1,\ x'_2,\ x'_3,\ x'_4$ にとりかえて$1\le h'<h$

\begin{displaymath}
{x'_1}^2+{x'_2}^2+{x'_3}^2+{x'_4}^2=ph'
\end{displaymath}

とできることを示す. これが示されれば, $h$ は正の整数なので有限回の操作の後 $h=1$ にすることができ, 題意が示されるからである.

式 (3.4) における $x_1,\ x_2,\ x_3,\ x_4$$h$ で割って絶対値最小の剰余を $y_1,\ y_2,\ y_3,\ y_4$ とする.つまり

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
x_1\equiv y_1 ,\ x_2\equiv y_2,\ x_3\eq...
..._i\vert\le \dfrac{h}{2}\quad ,\ i=1,\ 2,\ 3,\ 4
\end{array}
\end{displaymath}

従って

\begin{displaymath}
{y_1}^2+{y_2}^2+{y_3}^2+{y_4}^2\equiv {x_1}^2+{x_2}^2+{x_3}^2+{x_4}^2\equiv 0
\quad (\bmod.\ h)
\end{displaymath}

である.

\begin{displaymath}
{y_1}^2+{y_2}^2+{y_3}^2+{y_4}^2=hh'
\end{displaymath}

とおく.これを式(3.3) に代入する.

\begin{displaymath}
{z_1}^2+{z_2}^2+{z_3}^2+{z_4}^2=ph^2h'
\end{displaymath}

ただし

\begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
z_1\equiv x_1y_1+x_2y_2+x_3y_3+x_4y_4\...
...4+x_2x_3-x_3x_2-x_4x_1
\equiv 0 & (\bmod.\ h)
\end{array}
\end{displaymath}

ゆえに

\begin{displaymath}
z_1=ht_1,\ z_2=ht_2,\ z_3=ht_3,\ z_4=ht_4
\end{displaymath}

とおける.このとき

\begin{displaymath}
{t_1}^2+{t_2}^2+{t_3}^2+{t_4}^2=ph'
\end{displaymath}

ところが

\begin{displaymath}
hh'={y_1}^2+{y_2}^2+{y_3}^2+{y_4}^2\le 4 \left(\dfrac{h}{2} \right)^2
\end{displaymath}

ゆえに

\begin{displaymath}
h'\le h
\end{displaymath}

ここでもし $h'=h$ とすれば,この等号が成立するのは $y_i=\dfrac{h}{2} \ (i=1,\ 2,\ 3,\ 4)$ のときである.このとき $\dfrac{h}{2}$ は整数で

\begin{displaymath}
x_i=y_i+m_ih=(2m_i+1)\dfrac{h}{2} \ (i=1,\ 2,\ 3,\ 4)
\end{displaymath}

となる.これを式(3.4) に代入すると,

\begin{displaymath}
(2m_1+1)^2\dfrac{h^2}{4}+(2m_2+1)^2\dfrac{h^2}{4}
+(2m_3+1)^2\dfrac{h^2}{4}+(2m_4+1)^2\dfrac{h^2}{4}=ph
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
\{(2m_1+1)^2+(2m_2+1)^2+(2m_3+1)^2+(2m_4+1)^2\}\dfrac{h}{4}=p
\end{displaymath}

左辺は $({m_1}^2+m_1+\cdots+{m_4}^2+m_4+1)h$ となるが $h$ が偶数なので $p$ が奇素数であることと矛盾した.

\begin{displaymath}
∴\quad h'<h
\end{displaymath}

つまり証明は完成した.□


next up previous 次: 平方剰余の相互法則 上: 平方剰余 前: 平方剰余とルジャンドルの記号
Aozora Gakuen