2つの自然数とは,から始まって1たす操作をくりかえすことでになるときと定め, はより小さい,はより大きいという.
異なる自然数とはつねに,いずれかが他方より大きく,比較がいつでもできる.
自然数の集合の部分集合には最小の要素がただ一つ存在する.
要素が自然数からなる集合には最小の要素がただ一つ存在することを主張する. これは,整数分野の諸問題で存在証明の根拠になる.
一方,整数からなる集合や有理数からなる集合では最小要素があるとはかぎらない.例えば
整数の部分集合でも,そのうち正の要素からなる部分集合には最小の要素が存在する. 一次不定方程式の解の存在の証明に,この最小要素の存在を用いるところがある.
の部分集合 が条件:
を満たすなら, は 自身である.
これがなぜ数学的帰納法の原理なのか.
すべての自然数であることが成り立つことを示すときに用いる数学的帰納法という証明方法がある. のときに成り立ち,のときに成り立つと仮定するとでも成り立つ. するとこれですべての自然数で成り立つと言える.有理数や実数ではこうはいかない. ということは,この証明方法が可能な根拠は自然数の性質にあるということになる.
それが(iii) 数学的帰納法の原理である. これはどういうことを言っているのか. このことの理解は高校範囲を越えるのであるが, 自然数の大切な性質なので書いておこう.
を自然数 を含む命題とする. 数学的帰納法とは, すべての自然数でが真であることを証明するための, 次のような証明方法であった.
この証明方法ですべての自然数で成立することが, (iii) 数学的帰納法の原理から次のように示される.
条件が成立する自然数よりなるの部分集合をとする.
つまり
(証明終わり)
このように数学的帰納法は,自然数の性質を根拠とする証明法である.
を含み加法・減法で閉じている最小の集合が整数の集合であり, を含み乗法・除法で閉じている最小の集合が有理数の集合である.