この証明もいくつかある.
証明
直線と
の外接円の交点をとする.
を通りに平行な直線と直線,直線との交点をそれぞれ
とする.
またから直線への垂線の足をとする.
直線
と直線が直交することを示す.
そのためには
線分を点が まで平行移動するとき 点が異動する点をとする. この方向と大きさの平行移動で点は に, 点は に移る.
よって,点 から直線への垂線, 点 から直線への垂線, 点 から直線への垂線は1点で交わる. □
第二の証明
の辺との中点を
とする.
点を中心とし2点
,
を通る円がある.
また
点を中心とし2点
,
を通る円がある.
この2円の共通直線,つまり根軸は直線 と直交する. ところが なので この根軸が から辺への垂線に他ならない.
3円の3本の根軸は1点で交わるので, 点 から直線への垂線, 点 から直線への垂線は1点で交わる. □
耕一 各辺の中点を中心とし,角垂線の足を通る円の3本の根軸が1点で交わるというのは, 『数学対話』の「反転と円環問題」で読んだことがあります.
南海 この準備を済ますと,九点円と内接円の接点が 直線の直極点であることを示すことができる.
ある傍接円の傍心をとする. の九点円とその傍接円は直線の直極点で接する.
証明
正三角形ではないので,内心は外心と異なり,九点円と内接円も異なる. 定理1によって九点円と内接円は接する. したがってその接点はそれぞれの中心を結ぶ直線と九点円の交点である. この交点をとする.
が直線の直極点であることを示す.
そのために,
頂点から直線に下ろした垂線の足を
とするとき,
その証明をつぎの三段階でおこなう.
(1) の外心を原点にとり定理1と同様に角を決める. 定理1の証明から
一方,等式(1)をさらに計算すると,
(2)
点は点の直線への正射影である.
また点は直線上に
の順にあり,
となるものなので,
(3) を示す.
傍接円の場合の証明も同様である.この記述は略する. 以上から定理は証明された. □
耕一 計算量は多いですが,しかしうまく組みあわせるときれいな結果になるのですね.
南海 傍接円の場合の計算は略した.代わりに図を描いておこう.
いずれにせよ九点円と内接円または傍接円は接する.その接点は 外心と内心または傍心を結ぶ直線に関する直極点である. 同時にまたその接点は,辺の中点を中心とし内接円または傍接円の接点までの距離を半径とする反転で, その接点の頂角の二等分線に関する対称点が移る点でもある. あえて点に記号をつけず図そのものを示すのでよく味わってほしい.
耕一 見れば見るほど不思議です.