解答
点が三角形の内部にあるとする.
線分の延長線が線分 (両端を除く)と交わる.
この点をとする.
逆に正の数で
太郎 この問題の解をよく見ます. 正の数の組に対して等式(2)で点が定まります. を正数として も同じ点を定めます. 逆に 内部の点に対して, (1)で正の数の組の比が定まります.
そこで
は固定したうえで,
が正という条件を外し
実数を用いれば,数の組で平面上の点を表すことができるのではないか.数の組に対して
逆に平面上の任意の点に対して,
が一次独立であることより
このようにである数の組と, 平面上の点が対応するのだから, は座標ではないか,これが質問点です.
南海 まさにそうである.これは射影座標の一種と考えられる. 射影座標については既出のものでは『パスカルの定理』を, また今後書かれてゆく『幾何学の精神』を参考にしてほしい.
射影平面の射影座標ではが無限遠直線となる. ユークリッド平面は,射影平面での部分であり, が いわゆる座標平面の座標に対応する.
等式(3)で点を定める座標では, がいわば無限遠直線であり, の部分がユークリッド平面になる.
ただここでは射影幾何の問題としてこれを考えるより, 19世紀に盛んに研究された三角形幾何の一つとして考え, この方向でパスカルの定理の別証明まで行ってみよう.
任意の基準点をとって等式(3)を書き直すと
一方
太郎
重心は
内心について.
の辺長を
南海 重心座標のもうひとつの意味を考えよう.
を一つ固定する. 重心座標そのものは鋭角三角形を一つ固定すればよいのだが, 三頂点の位置ベクトルで,外心や垂心がどのように表されるかという観点から, 一般的に が鈍角三角形でもいいとする. ただし垂心を考えるときは,直角三角形ではないとする.
鈍角三角形の場合を含んで考えるために,その準備として,符号つき面積を定める.
で図形としての三角形を表すが,
同時にその面積も表すことにする.
ただし,3点
が左回りに並んでいれば正の値にとり,
右回りに並んでいれば負の値にとるものとする.
すべて比が問題なので正負を逆にしても同じことである.
さらに3点
が同一直線上にあるときは0を表すものとする.
このように約束すると,
と点に対してつねに
等式(4)は
図のような位置にがある場合.
は外分点である.符号も入れて
始点を変えて考えることにより
太郎
つまり,
重心座標はまた点を頂点とし,
の各辺をの対辺とする三角形の符号つき面積の値の比でもある.
絶対重心座標は
よって外心の重心座標は
南海 三角形には五心の他にも多くの点が定まる. それらの相互関係が,この重心座標や次に紹介する三線座標を用いて研究された. それは貴重なものであり,また実地に検証しながら証明してゆける分野で, 高校ではもっと取りあげてほしい.