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符号のある面積

南海  外積や行列式は面積や体積と関係する. 面積や体積は負でない実数値をとるものであるが, 一々絶対値を考えるより,次のように自然な符号をつけて考える方が, さまざまの関係式が簡明になる.

まず面積について復習し,符号付き面積(有向面積)を定義しよう.

符号付き面積


耕一  原点Oと2点 $\mathrm{A}(a_1,\ a_2)$ $\mathrm{B}(b_1,\ b_2)$ があるとき,その面積$S$

\begin{displaymath}
S=\dfrac{1}{2}\left\vert a_1b_2-b_1a_2 \right\vert
\end{displaymath}

です.

南海  これの根拠となった面積の式は?

耕一  $S=\dfrac{1}{2}\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}\sin\theta$ です.

南海  この角$\theta$は大きさを表すのだが,これを OAからOBへの符号つきの角とし,左回りを正としよう. つまり3点O,A,Bが反時計回りに廻っているとき, $\bigtriangleup \mathrm{OAB}$ の面積を正とし,逆回りのとき負とする.

このとき上の絶対値はどのようにはずすことができるか.

耕一  OAからOBへの符号つきの角を$\theta$とします. OAからOBへは回転と拡大なので

\begin{displaymath}
\vecarray{b_1}{b_2}=r\matrix{\cos\theta}{-\sin\theta}{\sin\theta}{\cos\theta}
\vecarray{x_1}{a_2}
\end{displaymath}

です.そこで試しに計算してみます.

\begin{eqnarray*}
a_1b_2-b_1a_2&=&
ra_1(a_1\cos\theta+a_2\sin\theta)-
ra_2(a_...
...1}^2+{a_2}^2}\sin\theta
=\mathrm{OA}\cdot\mathrm{OB}\sin\theta
\end{eqnarray*}

となります.ですから上記のように面積に符号をつけるとき,

\begin{displaymath}
S=\dfrac{1}{2}(a_1b_2-b_1a_2)=\dfrac{1}{2}
\left\vert
\b...
...array}{cc}
a_1&b_1\\
a_2&b_2
\end{array}
\right\vert
\end{displaymath}

となります.

南海  このように符号まで考えた三角形の面積を $S(\mathrm{OAB})$と書こう. それでは $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$の面積 $S(\mathrm{ABC})$はこの面積公式はどのようになるか.

耕一  点Aを基準点にするので, $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$から $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$への面積です. だから

$\displaystyle S(\mathrm{ABC})$ $\textstyle =$ $\displaystyle \dfrac{1}{2}\left\vert
\begin{array}{cc}
b_1-a_1&c_1-a_1\\  
...
...ft\vert
\begin{array}{cc}
a_1&b_1\\
a_2&b_2
\end{array}
\right\vert$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle S(\mathrm{OBC})-S(\mathrm{OAC})+S(\mathrm{OAB})$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle S(\mathrm{OBC})+S(\mathrm{AOC})+S(\mathrm{ABO})$ (8)

です. これは図のようになっていて, $\bigtriangleup \mathrm{OAB}$ $\bigtriangleup \mathrm{OBC}$の面積の和から $\bigtriangleup \mathrm{OAC}$の面積, ただし符号を除いた絶対値での話しですが, これを引いたものが $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$の面積なるので, よくわかる等式です.

南海  この関係は点Oの代わりに $\bigtriangleup \mathrm{ABC}$と点Pについてもいえる. つまり

\begin{displaymath}
S(\mathrm{ABC})=
S(\mathrm{PBC})+S(\mathrm{APC})+S(\mathrm{ABP})
\end{displaymath}

が成り立つ.



Aozora 2018-08-31