次: カタラン数
上: 相加相乗平均の不等式の証明
前: 特殊な函数を使うもの
関数の微分を使わずに数列だけで証明するには工夫がいる.
方法 7
次の命題を とおく.
このとき次の問いに答えよ,ただし は 、および の自然数とする.
- を示せ.
-
を示せ.
- が成立すれば
が成立することを示せ.
- の自然数 に対して が成立することを示せ.
解
-
等号成立は のとき.
ゆえに .
- まず
を示す.
したがって
なので(1)と合わせて
帰納法により
である.
- とする.つまり
ここで
を代入する.
つまり
.
- の任意の自然数 に対して
となる自然数 をとる.
(2)より
.
つぎに(3)の操作を 回繰り返し用いると
となり が成立することが示された.□
同様にたいへんうまい工夫がされている.これも入試問題になったことがある.
雜誌『初等数学』(2001年3月号)の宮地俊彦先生の報告によると,
1997年の『数学セミナー』(9月号)に掲載されたそうである.
方法 8
- に対して
を示せ.
-
を示せ.等号が成立する条件を
の関係で述べよ.
-
を示せ.
-
を示し,等号成立が
のときに限ることを示せ.
解
-
のとき
ここで
の符号と
の符号が
同じなので
等号成立は のときである.
- (1)の に
を代入する.
これを整理して
を得る.等号が成立するのは
-
を(2)の結果に代入することにより
となる.
- (3)から
に対して
両辺
にわたって加えることにより
を得る. なのでこれから
を得る.等号成立は
と帰納的に定まるので
のときに限る.□
2は別解がある.
ただし定積分を使う.雜誌『初等数学』(2001年3月号)の宮地俊彦先生の報告による.
方法 9
で定義された 関数 を
とする.
を正の数とし,定積分
を考えることにより,2を示せ.
解
で定義された 関数 を
と定める. は単調減少関数である.
ここで
である.
そこで
のとき
のとき
いずれの場合も2が( の場合で)示されている.□
これもよく知られたものだが,感心するほどうまく工夫されている.
方法 10
-
である任意の正数 に対し
を示せ.
-
である任意の 個の正数
に対し,
を示せ.
-
を示し,等号成立が
のときに限ることを示せ.
解
-
である任意の正数 に対し
等号成立は または のとき.
- 数学的帰納法で示す.
のとき. より一方が1以上で,他方が1以下である.
ゆえに(1)より
なので成立している.
で成立するとし での成立を示す.
である.ここで1以上のものと1以下のものを選ぶ.
番号を付け替えて
としてよい.
とおくと
.帰納法の仮定から
(1)から
なので
等号は
かつ のとき,
つまり
のときである.
ゆえに でも成立した.
よって一般に
である任意の 個の正数
に対し,
が成立する.
-
とすると
ゆえに(2)から
つまり
である.
等号成立は(2)から
,つまり
のときに限る.□
なんとなんと,こんなこともできる.雜誌『初等数学』(2001年3月号)の宮地俊彦先生によると
(3)の不等式はWIGERTの不等式 というそうだ.
方法 11
各
に対して
として一般性を失わない.
このとき
-
を示せ.
-
を示せ.
-
を示せ.
-
を示し,等号成立が
のときに限ることを示せ.
解
-
なので
等号成立は のときである.
-
,
なので
である.
- (1)より
(2)とあわせて
つまり
- (3)より
等号成立は
のときに限る.つまり
のときに限る.□
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