次: 内積の対角型行列表示
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南海
次元ベクトル空間の内積をもう一度考えよう.
いま一組の基底
をとる.
内積は1節ですでに定義している.
ベクトル空間の2つのベクトル
と
に対して内積
といわれる実数値が定まる,
その定義は内積の定義(4)を見てほしい.
一言でいえば,2つのベクトルを変数とし,
双線型で正の値をとる対称実数値関数ということである.
とする.このとき
と基底によって定まる一定の行列を用いて表される.
耕一
なので,この行列は左上から右下への対角線に関して対称です.
南海
このような行列を対称行列と呼ぼう.
またベクトル
を
のように成分で書いて1行列の行列と同一視しよう.そして縦に書いたベクトルは
のように表す.
一般に記号は行列の行列の成分を行列の成分と入れ替えた行列を表す.
を行列の転置行列という.
すると内積は対称行列を用いて
と書くことができる.ただし
である.
耕一
逆に対称行列を用いて
で
を定義すると,これは内積になりますか.
あっ,正の値をつねにとるかどうかがわからないのですね.
南海
双線型な実数値関数が得られるが,正値かどうかは未定である.
一般に,基底を一つ固定したとき対称行列に対して定まる
を双線型形式と呼ぼう.
また対称行列に対して定まる
を二次形式と呼ぼう.
二次形式があれば次のようにして双線型形式が定まる.
これが双線型形式であることを確認してほしい.
耕一
ですが,が対称行列なので
です.ゆえに
となります.
南海
とし,
とすれば,二次形式とはどのようなものになるか.
耕一
です.
ここでとすると,
『数学対話』−「パスカルの定理」−「特別な場合の演習問題」に出てきた2次曲線の一般形です.
Aozora Gakuen