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に〔辞〕

に〔辞〕[ni]

◯体言、または体言相等の語につき、用言に繋ぐ。するところを示す。格助詞。 また、文につき次の文の、順接での根拠、逆接での反例などを示す。接助詞。

◆動作などの目的の場や、また陳述の根拠としての理由などを示す。

※タミル語<in>由来。

▼〔格助詞〕用言で表される動作などのなされる場を示す。 ▽場所を明確に指定する。。 ◇『古事記』中・歌謡「相摸(さがむ)の小野邇(ニ)燃ゆる火の」 ◇『万葉集』一〇三「わが里に大雪降れり大原の古りにし里に落(ふ)らまくわ後」 ◇「故郷の小学校に集う」

※「川に遊ぶ」と「川で遊ぶ」はどのように違うのか。 ◇「川に遊ぶ」…川「に(という場所で)」遊ぶ。 ◇「川で遊ぶ」…「川(という場所)」で遊ぶ。 このように「場所」の意味を「に」が担うのか、それとも「川」自体に場所の意を込めるのかが、違うのではないか。

▽時を指定する。 ◇『万葉集』三七八四「心なき鳥にそありける霍公鳥 物思ふ時に鳴くべきものか」 ◇『万葉集』四九七「古(いにしへ)爾(ニ)ありけむ人も」 ◇「こんな時間にようこそ」

▽動作や感情、作用(受身・使役・比較等)の目標や対象を示す。 ◇『古事記』中・歌謡「尾張邇(ニ)直(ただ)に向へる」 ◇『万葉集』三六七一「ぬばたまの夜渡る月にあらませば 家なる妹に逢ひて来ましお」 ◇『枕草子』二七「人にあなづらるるもの。築土(ついぢ)のくずれ。あまり心よしと人にしられぬる人」 ◇「山に登る」

▽目的を示す。 ◇『古事記』上・歌謡「八雲たつ出雲八重垣妻ごみ爾(ニ)八重垣作るその八重垣を」 ◇『源氏物語』椎本「向かひの山にも時々御念仏に籠もりたまひしゆゑこそ、人も参り通りしか」

▽動作の原因、理由、機縁等を示す。 ◇『万葉集』四六六「そこ思ふ爾(ニ)胸こそ痛き言ひもえず」 ◇『源氏物語』帚木「つれづれと降り暮らして、しめやかなる宵の雨に、殿上にもをさをさ人少なに、御宿直所も例よりはのどやかなる心地するに」

▽資格や地位を表す。 ◇『万葉集』三六七六「天飛ぶや雁を使爾(ニ)得てしかも」 ◇『源氏物語』帚木「下揩ノはべりしとき」

▽「思う」「聞く」「知る」「見る」等の感覚動詞の内容を示す。 ◇『万葉集』三五九六「吾妹子が形見爾(ニ)見むを」 ◇『源氏物語』桐壺「ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど、うちうちに思ひたまふるさまを奏したまへ」

▽中古からの用法。他者や自分を主語として特立指示することを避ける用法。 ◇『源氏物語』桐壺「弘徽殿には久しく上の御局にも、参(ま)う上り給はず」

▽下の動詞を補足的に強調しまた状態を修飾する用法。 ◇『竹取物語』「立て籠めたるところの戸、すなわち、ただ開きに開きぬ」 ◇『古事記』下「足母阿賀迦邇(あしもあがかニ)嫉妬(ねた)みたまひき」 ◇『源氏物語』胡蝶「なでしこの細長に、此の頃の花のいろなる御小うちき」

▼〔接助詞〕述語用言の連体形をうけ、句文と句文とを接続し、並列や、後者の根拠などを示す。

▽並列・添加・継起等の関係を表す。 ◇『土佐日記』「かくうたふに、ふなやかたの塵も散り」

▽順接条件を表す。 ◇『竹取物語』「此事をなげくに、鬚も白く、腰もかがまり、目もただれにけり」 ◇『伊勢物語』六二「涙のこぼるるに、目も見えず、物もいはれず」

▽逆接条件を表す。 ◇『古今集』八八四「あかなくにまだきも月のかくるるか」 ◇『宇治拾遺物語』「かくいうほどに、風もふかぬに、このゆく舟の、こなたへより来」 ◇「こんなに思っているのに、どうしてもっと真剣に考えてくれないのか」