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はかる

はかる(計る、量る、測る、図る、諮る、議る、謀る)[hakaru]←[fakaru]

◯はか(計、量、果)はここまでと目当てするはたらきの大きさ。それが出来たかどうかをはかる。

※タミル語<vakai>(分割する、計量する)由来。「はか」は<paku>(割り当てる、分配する)由来。

◆今日はこれだけの田の草を刈ろうというように、広さなどをもとにここまでという目当て(はか)をつけ、それが出来たのかどうかを見定めること、これが「はかる」の原義である。「ここまで」という見当をどのようにつけるのか。そこには量の概念が芽生えている。そして労働の大小を生じさせるその量を見定めることから「量をはかる」になる。さらに、はかったことにもとづいてことを起こそうとすること、また見当をつけることと意味がひろがった。 水田耕作にともなう言葉。語根[faka]を同じくする言葉は、「はか」「はかなし」「はかばかし」である。

▼単位量に分け確認する。秤、枡(ます)、ものさし、時計などの計器で測定する。 ◇『日本書紀』雄略「国の危殆(あやう)きこと、卵(かひご)を累ぬるに過ぎたり。命の脩(なが)さ短さ、太(はなはだ)計らざる所なり」 ◇『今昔物語』一・二三「この甲の直(あたひ)を量るに、金の銭十億也」 ◇『東大寺諷誦文平安初期点』「丈尺を以て計(ハカリ)しかども」 ◇『正法眼蔵』「菩提薩タ(土ヘン+垂)四摂法」「心の大小ははかるべからず、物の大小もはかるべからざれども」

▼考えて実行する。 ▽物事の情況を考えて処置する。画策する。企てる。 ◇「自殺をはかる」 ◇「便宜を計る」 ◇『平家物語』二「これらが内々はかりし事のもれにけるよ」

▽相談する。協議する。自分の意見を人にただす。 ◇会議にはかる。 ◇『日本霊異記』上・三五(興福寺本訓釈)「時に市人評(ハカリ)て曰はく」

▽思いめぐらす。考慮する。分別する。 ◇『西大寺本金光明最勝王経平安初期点』九「自ら忖(ハカル)に、衆の病を救療するに堪能しぬべしと」 ◇『枕草子』一六一「あにはかりきや、太政官の地の今やかうの庭とならむことを」

▽おしはかる。推察する。予想する。想像する。 ◇「相手の心中をはかる」 ◇『土左日記』「日もえはからぬかたゐなりけり」

▽うかがいみる。見はからう。配慮する。 ◇『打聞集』竜樹菩薩隠形事「其後に人まをはかりて」 ◇『徒然草』一五五「病をうけ、子をうみ、死ぬることのみ、機嫌をはからず」

▽欺く。だます。たばかる。 ◇「まんまと計られた」 ◇『源氏物語』夕顔「げにいづれか狐なるらんな、ただはかられ給へかし」 ◇『源氏物語』螢「すずろごとに心を移し、はかられ給ひて」

−【はかばかし】 「はか」を重ねて形容詞化した言葉。見当どおりにできること。 ▽物事が順調に進行するさま。うまくいくさま。思わしい状態に事が運ぶさま。順調である。 ◇『宇津保物語』俊蔭「一手つかうまつりしを、そもそもはかばかしうや侍りけん」 ◇『源氏物語』末摘花「かようの御歩きには、随身がらこそはかばかしきこともあるべけれ」 ▽頼もしい。有能である。役にたつ。 ◇『源氏物語』若紫「いかにはかばかしき御答へ聞こえさせたまはむ」 ◇『源氏物語』桐壺「取り立てて、はかばかしき後見しなければ、事ある時は、なほ拠りどころなく心細げなり」 ◇『落窪物語』一「はかばかしき人もなく」 ▽際立っているさま。はっきりしている。明確である。 ◇『枕草子』三〇一「木どもなどのはかばかしからぬなかに」 ◇『宇津保物語』俊蔭「はかばかしくも身の上をえ知り侍らず」 ▽表向きであるさま。正式だ。本格的だ。 ◇『源氏物語』若菜上「うるはしだちて、はかばかしき方に見れば、いつくしくあざやかに目もおよばぬ心地するを」

−【はかなし】 目当てや目標としての「はか」がない。はたらきがいのないこと。また「はか」を定めがたいことから、頼りない、とりたてて重要でないことなど。 ▽思い通りにいかないさま。順調でないさま。期待はずれだ。 ◇『竹取物語』「御輿を寄せ給ふに、此かぐや姫きと影に成ぬ。はかなく口惜しと思して」 ▽頼りない。心細い。 ◇「はかない望みを抱く」 ◇『古今集』五二二「行く水に数かくよりもはかなきは」 ▽あっけないさま。 ◇『源氏物語』宿木「はかなく暮ぬれば、その夜はとまり給ぬ」 ▽無常であるさま。 ◇『和泉式部日記』「夢よりもはかなき世のなかを嘆きわびつつ」 ◇『源氏物語』夕顔「人のはかなきさまになりにたるを」 ▽表立たないさま。しのびやかだ。 ◇『源氏物語』常夏「さるべき折々に、はかなくうち忍び」 ▽表向きでないさま。かりそめのさま。何げない。 ◇『蜻蛉日記』上「はかなき祓へなれば」 ▽粗末なさま ◇『枕草子』二二八「いとはかなき家に泊りたりしに」 ▽幼稚なさま。あどけない。 ◇『源氏物語』若紫「いとはかなう物し給ふこそ、あはれにうしろめたけれ」 ▽浅はかなさま。たわいない。 ◇『源氏物語』少女「はかなき親に、かしこき子のまさるためしは、いと難きことになむはべれば」