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やま

やま(山)[yama]

◆平地より著しく高くなってそびえている地形。火山作用、侵食作用、造山作用によって地表にいちじるしく突起した部分。また、それの多く集まっているところ。

生きてゆく本拠としての「さと」,それを囲んで広がる「の(野)」に対し、「やま」はさらに遠くにあり、通常は人が立ち入らないところである。

山は神が降りてくるところであり、人を葬る所であり、異境との境であった。

「おか(丘.岡)」は「野」にあって「はら(原)」より少し高くなっているところである。

▼地形としての山。 ▽里や野に対していう。 ◇『古事記』中・歌謡「平群の夜麻(ヤマ)の熊白檮(くまかし)が葉を」 ◇『万葉集』三二四〇「わが過ぎ行けば いや遠に さと離(さか)り来ぬ いや高に 山も越え来ぬ」

▽神の降りるところ。 ◇『万葉集』三二二七「葦原の瑞穂の国に 手向けすと 天降りましけむ 五百万(いほよろず) 千万神の 神代より 言ひ継ぐ来る 神名火(かむなび)の 三諸の山は」 

▽死者を葬るところ。 ◇『万葉集』二一二「引き手の山に妹を置きて山路を行けば生けりともなし」

▽異境との境。 ◇『日本書紀』歌謡「嶮(さが)しき山も 我妹子(わぎもこ)と 二人越ゆれば」

▽伐採地としての山林。種々の産物を得たり、狩猟したりするための山林。 ◇『万葉集』七七九「板葺の黒木の屋根は山(やま)近し」

▼比喩としての用法。 ▽墓地が、多く山中、山麓に営まれたところから墓場や墳墓、また山陵。 ◇『源氏物語』須磨「御山に参り侍るを。御言伝やと聞え給ふに」

▽土を盛り、石を積んでつくったもの。築山。 ◇『源氏物語』桐壺「もとの木立、山のたたずまひ、おもしろき所なりけるを」

▽高く盛りあがった状態、またはその物を地形としての山になぞらえていう語。 ◇「瓦礫の山」 ◇「借金の山」 ◇『蜻蛉日記』上「山とつもれるしきたへの枕の塵も」

▽仏道修行の所としての山。特に比叡山をいう。 ◇『伊勢物語』「尼になりて、山に入りてぞありける」」 ◇『栄華物語』「かの花山院は去年の冬、山にて御受戒させ給いて」 ◇「山を降りる」比叡山を降りて仏道修行し街に入り仏法を広めること。鎌倉仏教は山を降りた法然、親鸞、道元らによってひらかれた。

▽継続または連続している物事が頂点に達したのを、地形の山頂にたとえていう。 ◇「物語のやまはここだ」 ▽事の成りゆきにおいて、もっとも重大なところ。事の成否がきまるところ。 ◇山場 ◇「今日明日が山だ」

▽病気のもっとも危険な段階。 ▽「熱も山を越す」

▽せいいっぱいのところ。 ◇「これが関の山だ」

▽祭礼に出る山車(だし)で、山の形に作った飾り物。京都の祇園祭では、鉾(ほこ)よりもおおむね小型で、真木(しんぎ)を立てず、構造の簡単なものをいう。 ◇山鉾

▽鉱脈を探し当てることが、投機的な仕事であるところからから転じ、思いがけない幸運をあてにすることや、万一の幸運をねらって事を行うこと。 ◇「山が中る(外れる)」

▽確かな根拠がなく、偶然の的中をあてにしてする予想。 ◇「山を掛ける(張る)」 ◇「山勘」

▽山、特に山林や鉱山を数えるのに用いる。盛り分けたものを数えるのに用いる。 ◇「一山百円」