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いる(入る)

いる(入る、納る、要る)[iru]

◯そとからうちへ、まるごとうつること。

◆内と外を分ける境をこえて、外から内に移ること。

※タミル語<cer-uku>由来。

※「いず(出ず)」の対義語。

▼外部から内部へ移る。入ること。

▽外から、ある物の中、ある場所の内へ移動する。また、移動して、その中にある。 ◇『日本書記』神代「伊弉諾尊、伊弉冉尊を追ひて、黄泉に入(い)りて、及(し)きて共に語る」 ◇『古事記』中・歌謡「人さはに来伊理(イリ)をり」 ◇『更級日記』「師走の二日京にいる」

▽見える所から、陰に移動する。その場から退く。奥へ引っ込む。特に、日、月が沈む。 ◇『万葉集』一七一二「天の原雲なき宵にぬばたまの夜渡る月の入らまく惜しくも」 ◇『古今集』一〇五九「よひのまにいでて入(いり)ぬるみか月の」 ◇『平家物語』一「瓶子のくびをとってぞ入(いり)にける」

▽器に収まる。 ◇『源氏物語』須磨「さるべき書なども、文集などいりたる箱」

▽特定の環境の中に移る。宮中、仏門、学校などにはいる。 ◇『源氏物語』葵「去年内裏にいり給ふべかりしを」 ◇『徒然草』五八「一度道に入(いり)て世をいとはん人」

▼ある限られた範囲内に取り込まれる。 ▽仲間になる。含まれる。また、書物に載る。 ◇『古今集』仮名序「万葉集にいらぬ古き歌」

▽知覚できる範囲にはいる。 ◇『万葉集』二九七七「心に入(いり)て恋しきものを」

▽ある状態、時期などに達する。 ◇「技神にいる」 ◇『蜻蛉物語』中「彼岸にいりぬれば」

▽こもる。 ◇『源氏物語』宿木「そなたざまには心もいらで」

▽内に向かってくぼむ。くぼみや裂け目ができる。 ◇『源氏物語』須磨「海づらはややいりて、あはれにすごげなる山中より」

▽付けられる。施される。 ◇「筋が入る」、「筋金入り」。

▽必要になる。入用である。 ◇『源氏物語』若菜上「かなぶみ見給ふるは、目のいとまいりて」

▼ある状態のうちになる。補助動詞。動詞の連用形につく。

▽すっかりそうなる、ほとんどそうなること。 ◇「死に入る」、「消え入る」、「絶え入る」、「寝入る」、「冷え入る」。

▽心のうちに入る。せつに、深くそうする意を表わす。 ◇「思い入る」、「念じ入る」、「泣き入る」、「恐れ入る」、「痛み入る」。