◯言葉としては「うつし」が先である。
−【うつし(現し、顕し)】[utusi]
◆創造の場としての「うつ」において、目に見えるものとしてこの人世界に存在するようになること。 ◇『日本書紀』神代「葦原の中つ国にあらゆる(いるすべての)現しき青人草(人民)
※この言葉は現代日本語ではほとんど用いられない。近世江戸時代においてすでに、創造の場としての「うつ(空、虚)」、そこに現れることとしての「うつし(現し、顕し)」は、すたれていた。
◆うつつ(「うつし(顕)」の「うつ」を重ねた「うつうつ」の約)人世界に実際に存在していること。また、その存在しているもの。現実。夢・架空の物語・死・虚構のものなどに対して用いられる。 ◇『万葉集』三九七八「夢には見れど宇都追(ウツツ)にし直(ただ)にあらねば」 ◇『源氏物語』葵「うつつの我身ながら」 ◇『源氏物語』蛍「うつつの人もさぞあるべかめる」
▽目ざめていて、意識がはっきりしていること。正気である。 ◇『源氏物語』葵「うつつにも似ずたけく厳(いか)きひたぶる心いできて」
▽夢か現実かはっきりしないような状態。また、そのような状態にあるもの(古今集の時代から「夢うつつ」「夢かうつつか」などと多く使うようになり、この誤用が生まれた)。
◇『太平記』二五「一同に皆入興(じゅきょう)して幻(ウツツ)の如に成にけり」
◇『好色一代女』二「万事頼みあげるなどいへば、住持はや現(ウツツ)になって」
◇『好色五人女』一「魂身のうちをはなれ清十郎が懐に入て我は現(ウツツ)が物いふごとく」
◇『柳多留』二「うつつにも団扇のうごく蠅ぎらひ」