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うつる

うつる(移る、映る、写る)[uturu]

◯うつし(現し)、うつつ(現)、(移る、映る)などの「うつ」と同根である。 「うつ」は現代日本語では「うつる」に残る。

「うつ[utu](全、空、虚)」は、創造の場としての「うつ」であり、そこにおいて生みだされ、この世に存在するものをいう。

◆目に見えてこの世に存在するものが、別の所にそのままの形で再び現れること。「移る」は同じ種類の空間の別の所。「映る」、「写る」は別の種類の所。

▼移る、遷る ▽所が変わる。 ◇『土左日記』「船より人の家にうつる」

▽官位、権限、職務、職場などが変わる。 ◇『首書源氏物語』若菜下「右大将の君、大納言になり給ひて、例の左に移り給ひぬ」

▽対象があるものから他のものにかわる。 ◇『古今集』一〇四「花みれば心さへにぞうつりける色には出でじ人もこそしれ」

▽色香が、他のものにつく。 ◇『後撰和歌集』六三二「色ならば移るばかりも染めてまし」

▽もののけが、祈祷によって「よりまし」に付く。 ◇『源氏物語』若菜下「物のけ、小さきわらはにうつりて」

▽伝染する、火事が飛び火するなど。 ◇『方丈記』「都の東南より火出できて〈略〉民部省などにまでうつりて」

▽時がたつ。 ◇『古今集』仮名序「たとひ時うつり、事さり、たのしびかなしびゆきかふとも」

▽状態が変わる。 ◇『仏足石歌』「これの世は宇都利(ウツリ)去るとも」 ◇『古今集』一一三「花の色はうつりにけりないたづらに」 ◇『万葉集』一五一六「秋山にもみつ木の葉の移去者(うつりなば)」

▽人が死ぬ。 ◇『撰集抄』四「うつりし人の後世を、こまごまと弔(とぶら)ひなんどする人だにも」

▼映る、写る ◇『土左日記』「やなぎのかげの、川の底にうつれるを見て」

▽映像がスクリーンに現われる。 ▽人目にはっきりと見える。また、人の心にある印象を与える。 ◇「人目にどううつるか」

▽つり合い、色の配合などが、よく合う。しっくりする。