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が〔辞〕

が[ga]

◯「甲が乙」は、甲が乙という場のうちにあることを意味する。

※タミル語<aka、akam>由来。<akam>は、内部、心、胸、場所、農地の意味をもち、日本語の福島、茨城や千葉等の方言「あか」つまり農地、畑地に続いている。つまりあることの内、あることの場、などの意味をもつ。この基本は現代日本語にもそのまま引き継がれている。

◆乙という述部の範囲に甲があること。乙が既知であるときに甲がその属性をもつことを「甲が乙である」という。それに対して「甲は乙」は逆に甲が既知であるときその属性の一つに乙があることを示す.

▼甲,乙とも体言。

受ける体言が、下の体言に対して修飾限定の関係に立つことを示す。現代語では「の」が用いられることが多い。甲が人の場合、話者と乙を共有すると考えられるとき「が」を、客観的に述べるときは「の」を用いた。 ◇『古事記』上・歌謡「太刀が(賀)緒もいまだ解かずて」 ◇『今昔物語』三一・五「娘一人が方に十人づつなるべし」 ◇『枕草子』八「大進生昌が家に、宮の出でさせたまふに」 ◇『平家物語』二「おのが翅(つばさ)を結びつけたる玉章(たまづさ)を」 ◇「わし(おら)が所」 ◇「一万円がほど損した」

▽下の形式名詞(「から、ごと、むた、まにま、ため」等)の実質、内容を示す。 ◇『万葉集』一八〇七「遠き代に有りける事を昨日しも見けむ我(ガ)ごとも念ほゆるかも」 ◇「食わんがために働く」

▼甲が体言、乙が一定の叙述。体言のところは「何々なのが」と用いて一定のことを表すこともある。 ◇『古事記』上・歌謡「青山に 日賀(ガ)隠らば ぬばたまの 夜は出なむ」 ◇『源氏物語』夕顔「優婆塞が行ふ道をしるべにて来む世も深き契りたがふな」 ◇『今昔物語』三一・六「其れが極めて見ま欲しく思給へ候ひしかば」 ◇「食事が済んだら出かけよう」 ◇「故郷が恋しい」 ◇「酒が飲めないのはつまらない」 ◇「勉強するのが好きなんだ」

▽連体形で終止し、余情表現となる文の主語を示す。 ◇『源氏物語』若紫「雀の子をいぬきが逃しつる」

▽主として、新たな結論を提示したり、提示する事柄を強調したりする。 ◇『今昔物語』二二・七「年十三四許(ばかり)有る若き女の、薄色の衣一重・濃き袴着たるが、扇を指隠して」 ◇「雨が降ってきたので傘がいる」 ◇「君は良くても僕が許さない」

▼甲も乙も叙述。 ▽因果関係のない、単なる接続を示す。 ◇『平家物語』二「やうやう日暮れ、月さし出でて、塩のみちけるが、そこはかとなき藻くづ共のゆられよりけるなかに」 ◇『宇治拾遺物語』三・一五「長門前司といひける人の女二人有りけるが、姉は人の妻にてありける」 ◇「終わりましたが、帰っていいですか」

▽逆接の関係で接続する。「…けれども」「…のに」。 ◇『保元物語』下「御弟、天暦の御門にゆずり奉られしが、御後悔あって、かへりつかせ給はん由」 ◇「持っているが貸さない」