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さき

さき(先、前、崎)[saki]

◯[su]と[aki]に由来するのではないかと考えられる。[aki]は実りそのものであり、その実りをまさにもたらす([su])ということが基層の意味である。つまり、[sak]は力が充満しいままさにはじけ出ようとする、という意味を根底にもつ。

◆生長のはたらきが頂点に達し、内から外に形を開くこと。したがって空間的にも時間的にも、話者の立っている地点から続いているところにある線(点)、またはその点の方向を指し示す。

「さく(咲く、裂く、割く)」と同根。はじけ出ようとする「ところ」「とき」を指す。

▼「先、前」。「ところを指す」話者が立っている地点の何らかの性質が続いている限界の地点を指すことが原義で、さらにその方向も示す。 ◇『今昔物語』二八・三三「錐の崎の様なる亀の歯共」 ◇『源氏物語』蓬生「御さきの露を、馬の鞭して払ひつつ、入れたてまつる」 ◇『太平記』九「宗秋こそ先(まづ)自害して。冥途の御先(さき)をも仕らんと存候つるに」 ◇『太平記』一〇「夜昼八十余箇度の戦に毎度先(さき)を懸(かけ)、囲(かこみ)を破て」

▽「ときを指す(「前」を当てることもある。)」話者が現在と考えるところから何らかの性質が続いている限界の時点を指すことが原義で、さらにその方向も示す。過去についても将来についても用いる。 ◇『万葉集』三七九五「恥を忍び恥を黙(もだ)して事も無く物言はぬ先に我は寄りなむ」 ◇『源氏物語』総角「さきの春も、花見に訪ね参り来しこれかれ」 ◇『源氏物語』夕顔「さきの世の契しらるる身のうさに行末かねて頼みがたさよ」 ◇先の大戦 ◇この先何があるかわからない。

▼「崎」。陸地が海や湖などの中へつきでた所。山や丘が平地につきだした所。 ◇『古事記』上・歌謡「かき廻(み)る磯の佐吉(サキ)落ちず」 ◇『万葉集』四四〇八「丘の佐伎(サキ)」

※「は(端)」も、本体があってその本体の境を示すが、言葉の意味する運動の方向は「さき(先)」とは逆に、本体の内部へ向かう。価値が本体の側におかれている。「軒端、のき・は」「言葉、こと・は」